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『伊藤潤二展 誘惑 JUNJI ITO EXHIBITION : ENCHANTMENT』世田谷文学館

プレスリリースから引用する。
世田谷文学館(東京都世田谷区南烏山1-10-10)にて、「伊藤潤二展 誘惑」を2024年4月27日(土)より開催いたします。本展は、漫画家・伊藤潤二初の大規模な個展として、自筆原画やイラスト、絵画作品を展示します。デビュー作品の『富江』をはじめ、『うずまき』『死びとの恋わずらい』『双一』などのシリーズ漫画のほか、『首吊り気球』『伊藤潤二の猫日記 よん&むー』『溶解教室』などの自筆原画に加え、本展描き下ろしの新作も公開します。人間の本能的な恐怖心や忌避感を巧みに作品に映し出しながらも、日常と非日常、ホラーとユーモアを自在に行き来する伊藤の作品世界に“震える”ひと時をお楽しみください。

展示室への階段前から盛りあがる

初の大規模個展というのは意外に感じたが、展示された作品とその量にふれた今では、間違いなく " 大規模 " というに相応しい展覧会だったことを実感している。

展示場入口

漫画家の個展なので、自筆原画はともかく、あらためて展示されたイラストや絵画を観るのは、人によっては新鮮味に欠けることがあるかもしれない。しかし、伊藤潤二は漫画のひとこまが強力な説得力を持つ単独作品となる人である。もちろん数あるコミックの表紙はそれだけで立派な伊藤潤二作品として成立しているので、特に初期の短編に不滅の魅力を感じている僕としては「脱走兵のいる家」「首のない彫刻」「首吊り気球」の原画を観ることができたのはうれしかった。

左上から時計回りに「墓標の町」「首吊り気球」「脱走兵のいる家」「中古レコード」

展示構成すべての章が凄い。息を呑むほどに美しく、素晴らしい。圧倒される数の生原稿とイラスト、絵画に引き込まれ、時間を忘れたが、いちばん印象に残ったのは第3章『怪画』だ。特にここに展示されていた「首のない彫刻」のイメージが流用された1枚。「多身の舞」とタイトルされたその絵には " 気に入った絵なので売らなかった " とキャプションがあったように、実に伊藤潤二している美しく恐ろしい、素晴らしい作品だった。

ご本人のアイデアらしい『死びとの恋わずらい』の恋みくじなど、作品以外でも楽しめる企画があり、よい意味で鑑賞中に息抜きができるのが、伊藤作品にも見られる " 怖くて笑える " という特徴と同じで、いいなぁと思った。

僕は " 吉 " だった

私物が展示された「趣味の部屋」には、歯科技工士時代に描いたポール・マッカートニーの絵が2枚。実際に同世代なのだけれど、こんなところも親近感が強烈にわく。

ポール・マッカートニー

『伊藤潤二 × 藤本圭紀 富江 コラボレーション・スタチュー』は、美しさと色っぽさを超えた " かっこよさ " が漂う作品だった。

伊藤潤二 × 藤本圭紀 富江 コラボレーション・スタチュー
こちらは伊藤潤二、自らが彩色をした、世界にただ一体の『富江スタチュー』

ファンはマストの『伊藤潤二展 誘惑 Illustrations』を筆頭に、グッズも何を買うか迷いに迷うほど充実していた。開催前の発表時から決めていた「ホラーなメタルブローチ (首吊り気球)」を購入。

ホラーなメタルブローチ (首吊り気球)
イラスト集、オリジナルクッキー缶、チケット、ブローチ、フライヤー

展覧会を観た後は、伊藤潤二作品を引っ張り出し、初期短編から読み直している。僕と伊藤潤二の出会いは1996年。雑誌GONでの特集だった。興味を持って当時のコミックを一冊だけ買って読んだらハマり、一週間も経たずに、GONで紹介されていた当時のコミック全巻を揃えた。初期の短編は今でも愛すべき作品だが、現在に至るまで、その唯一無二の世界観は変わらずに素晴らしい。あらためてそのことを認識し、思い知らされた展覧会だった。

P.S.
記念すべき出会いは雑誌GON。

コミックドラッグ伊藤潤二
出会いから1週間ですべて揃えた
愛すべき初期の短編、ハロウィン少女コミック館
表紙だけで満足してしまう作品群
「憂国のラスプーチン」のみ未読

2013年、アートガレー カグラザカで開催された伊藤潤二原画展で、デビュー作「富江」が収録されたハロウィン少女コミック館『屋根裏の長い髪』にサインをいただいた。

宝物


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