SETA music live「THE TITLE」SHIBUYA SACS 2023.12.17.
はじめてSETAのうたを聴いたのは2017年、タワレコのパイドパイパーハウスでおこなわれたトークショー『佐橋と長門の“私が愛した女性(シンガーソングライター)”たち』後のミニ・ライヴだった。ライヴ後にサインをもらったし、演奏に加わることはなかったが、会場にいた駒沢裕城さんが最後に呼び出されるなどもあったから、彼女との出会いの機会は印象に残るものになっていた。
その後は2021年、毎月 " うたのカレンダー " と題された、渋谷の屋外でおこなわれたSETAと佐橋佳幸による、季節に合った名曲を歌い継ぐフリーライヴを観に行った。選曲は、まずは誰もが知る有名な曲のカヴァー。例えば10月ならば「秋の気配」「秋桜」「渡良瀬橋」「TRUE LOVE」。1月ならば「さらばシベリア鉄道」「サボテンの花」「各駅停車」「すばらしい日々」といった曲が並んだ。もちろんこうしたカヴァーが楽しいライヴであるのだけれど、これらに加えて必ず披露されるオリジナルが聴きもので、僕自身もいつしか新曲を楽しみにしていた。" うたのカレンダー " で発表されたのは「鬼の子」「世界に」「月下」など、いちど聴けば印象に残る曲が多かったし、実際、彼女の代表曲と言ってもいい作品群だと思う。これらがまとまってCD化されていないのが不思議である。
僕が初めて体験する彼女のワンマンは、そんなオリジナルをたっぷりと聴くことができた。会場は自身の絵の個展が開催されている渋谷SACS。バックを務めるのは佐橋佳幸のギターとDr.kyOnのキーボード。いわゆるダージリンだ。" うたのカレンダー " は佐橋のギターのみで歌われていたので、kyOnのキーボードが加わったことは、たったひとつ楽器が増えただけだが、曲を彩る色は華やかになり、聴きなれていた曲が生まれ変わったかのようだった。
ダージリンをバックにした力むことなく聴けるハイトーン・ヴォイスがとても心地よい。演奏された13曲のうち、オープニングの「First Boy」。そして切ないメロディが印象的な「金魚鉢」「片道の夜行バス」が特によかった。
来年は、絵が東京以外の国内とアジアをツアーして回るそうだが、音楽作品もしっかりと届けられる予定とのこと。充実した曲がたくさんあるのだから、ライヴやCD化などで、もっと多くの人が聴けるように発表してほしい。