浜田真理子 還暦記念コンサート 極上の一日 島根県民会館 2024.10.05.
松江に足を運ぶのは実に5年ぶり。今年は浜田真理子の還暦プロジェクトである全県ツアーの締めくくりとしておこなわれるホームタウン公演。選択肢の中に " 行かない " は無かった。
コンサートのタイトルにある " 極上 " は、彼女が結成したバンド名でもある。メンバーは、浜田真理子(Vocal,Piano)、檜山学(Accordion)、Marino(Saxophone)、橋本 歩(Cello)。2部構成の1stステージは、ソロの弾き語りと、この極上メンバーがひとりずつ加わっていくセットだった(1曲だけスペシャル・ゲストとして紹介された、とんちピクルスとの「夢の中で泣いた」があった)。2ndステージは、橋本歩が在籍するチドリカルテットとのセット。オープニング・アクトの胡池マキコも含め、メリハリのある2部構成で存分に楽しませてくれた。
既に弾き語りのスタイルで完成している浜田真理子の音楽だが、2017年におこなわれたアルバム『TOWN GIRL BLUE』レコ発ライヴ以降、いくつかのバンド編成をはじめ、様々なミュージシャンとのセッションでも披露されるようになった。今では当たり前になったスタイルだが、このことで多彩な色に染められた曲を聴く楽しさと、どんなアレンジであったとしてもオリジナルの魅力が欠けることなく輝きを増す曲の強さを僕は知った。何より、自然かつ堂々と共演をこなす現在の姿からも『TOWN GIRL BLUE』は彼女自身のターニング・ポイントになったと想像できるし、もちろん音楽にもそれは反映されているだろう。
こうした個人的な思いが間違ってはいないことを、あらためてこの日の極上、チドリカルテットとの演奏は僕に証明してくれたと思う。特に2ndステージで披露された橋本歩アレンジの曲たちは、弦が加わったことでの聴き応えと共に、ピアノと弦楽四重奏の5人は実にステージ上では映え、音楽的にも視覚的にもかっこよかった。肝心のアレンジの効果は、曲に弦が入るとよく言われがちな " 美しい " で終わることはなく、もちろんそれも感じられたうえで、歌メロにぶつかり重なる弦のフレーズにより適度な緊張感が表現された、見事なアレンジだった。ちなみに「ROAD」のみ、Marino経由で依頼したデヴィッド・マシューズのアレンジで披露。これもシンプルでまっすぐな編曲でよかった。
もちろん1stステージでの檜山学とMarinoも、長年の共演から安定した演奏を聴かせてくれた。特にバンド名の由来になったというインストゥルメンタル「極上のワルツ」を演奏する4人はかっこよかった。歌ものでなくても満足させてくれることも、今の浜田真理子の魅力だ。
コンサート1曲目は「Treasure」。締めくくりは「わたしたちのうた」だった。「Treasure」の歌詞にある " あなた " と " わたし " を、僕は自分に置き換えて聴いた。僕は " あなた " であり、" わたし " だった。そして「わたしたちのうた」は、そのまま浜田真理子の宣言として聴いた。
あなたの好きなうたを
光さす明日がくるように 歌いましょう
彼女からファンへの思いであり、想いでもあり、柔らかで優しいのだけれど、力強いメッセージ。ずっと歌い続けてほしい。終わらない日まで。