Hello!! The Street Sliders 日本武道館 2023.05.03.
シンプル過ぎるステージ・セット。並べられた楽器。日本武道館を埋め尽くした人たちが見つめるその場所に、求められている者たちが出てくる前から、会場全体が尋常ではない幸福感に包まれていた。それなりに数多くライヴを体験してきているけれど、ひとつになった思いや想いが溢れそうな開演前は久しぶりだ。期待と緊張、喜びと楽しさで武道館が爆発しそうだった。
Hello!
HARRYの第一声がズドンと響く。ココロに響いたのはもちろんだが、実際の音としても凄かった。そして間髪入れずにZUZUのドラムから「チャンドラー」。
俺に何か言いたそうだが
すぐにロックン・ロールでイカれるぜ
22年の長い時間が帳消しになった瞬間だった。腰に直撃する音が、身体を踊らせてくれるだけでなく、ココロも大きく躍らせてくれる。何も変わっちゃいないストリート・スライダーズが鳴っていた。
そうはいっても、以前にはなかったメンバー紹介や、あんなに観客に応えるZUZUなど、40周年スペシャルらしく嬉しい場面も見られた。そして何といっても “ 新しいヤツを “ とHARRYが紹介し、JOY-POPS復活時の発表曲をスライダーズで披露したことで、次とこの先があることを示してくれたのが素晴らしい。
実際、終演後には、ビッグなサプライズとして秋のツアーが発表され、それが本当であることを具体的に知らされたのだが、40周年に伴う一連の流れを反映させてみると、スライダーズの新曲として演奏された「曇った空に光り放ち」の、その歌詞を追えばグッときてしまう。とてつもない時間が経っているから尚更そう思う。
当初、僕は3月にリリースされた、『On The Street Again -Tribute & Origin-』の収録曲が、武道館前夜祭として開催された豊洲PITとあわせて、2日間で演奏されるのかなと思っていたが、そこは彼ららしく、いわゆるグレイテスト・ヒッツ的なメニューにはならなかった。
そんな中でも、武道館の本編を締めくくる曲が嬉しかった。僕の中でネガティヴな気分を吹き飛ばしてくれる曲として、長年存在し続けている「風の街に生まれ」だったからだ。何の曲がどの位置に持ってこられてもおかしくはないとはいえ、この曲がラストに歌われることはまったく想像していなかったから、HARRYの紹介から、蘭丸があのリフを弾いた瞬間、生きていて良かったと本気で思った。
この曲でもわかるように、スライダーズは “ 風 “ のバンドでもある。これからも様々な風を歌って欲しい。
アンコールに応えてくれたスライダーズは、客電がつき、まるで昼間のような、裸で剥き出しになった武道館で、「TOKYO JUNK」を最後にぶっ放した。そこにあったのはロックン・ロールだけ。何と美しい光景だっただろう。
そういえば、発表された秋のツアー。そのタイトルは『ROCK’N’ROLL』。かっこいい。