仲井戸"CHABO”麗市 Music From CHABO BAND EX THEATER ROPPONGI 2023.10.15.
最初の音を聴いた瞬間、開演前に構えていた気持ちが一瞬で消えてしまった。僕にとってはCHABO BANDが仲井戸麗市の音である。その音が鳴ったのだ、目の前で、4年ぶりに。
ロビー・ロバートソンの訃報はチャボにとって想像以上に大きかったようだ。4年ぶりのCHABO BAND LIVEのテーマを " ザ・バンド " にさせてしまうくらいなのだから。想像もしなかったことだが、しかし、結果的にこれが吉と出ていた。
「The Third Man Theme」でメンバーはステージに登場
チャボは自分にとって大きなライヴの構成を考えることに ” 命をかけた “ と発言する人である。しかも、この日は自分の演りたいことを、演りたいようにできるバンドを従えている。そんな無敵のチャボが、1974年のボブ・ディラン&ザ・バンドを参考にしたニュー・アレンジで自身の代表曲を生まれ変わらせるのだ。それが「打破」だったり「BGM」なのだから、前半から驚きと感動と興奮が続いた。僕がこれまでライヴで聴いてきた ” アレンジされたオリジナル曲 ” をいいと思ったことは少ないのだが、この日はそれを感じることがなかったどころか、まるで新曲のように響き、沁みた。特にまったく印象が変わってしまった「マイホームタウンの夜に」が白眉。こんなにかっこいい曲だったんだ…いや、この日のCHABO BANDがかっこいい曲にしたのだろう。
さらに、デモ・テープをテーマにした個人的な作品集『Dessin』シリーズ収録曲を完成形ともとれる姿で提示してくれたのも嬉しい。全曲をCHABO BANDでレコーディングして欲しい…なんて、贅沢なお願いをしたくなる。
本編の最後は「R&R Tonight」だった。曲に入る前にチャボがこれまで発言してきたロックン・ロールに対する思いの集大成的なMCがあった。
みんなはロックン・ロールに何で出会ったの?
ロックン・ロールがなかったら俺はみんなと会えなかった
自分にとってロックは “ パスポート “ と答えていたけれど今は “ 命の恩人 “
事件を起こすヤツはロックン・ロールを聴かないのかな?
ロックン・ロールを愛していたら人に酷いことはしないと思う
甘っちょろいかな
ロックン・ロールは晩ご飯のあとに3~40分聴けばいいってもんじゃない
こうした発言のほとんどは、チャボが南青山MANDALAでおこなっているDJで話してくれたものなのだが、ライヴの中…しかもあの場面で聴くと何倍も、何十倍も、何百倍も心に響いてくる。しかも、バックでkyOnのピアノが曲のコードを奏で続けている中でのMCなので、80年代全盛期のRCサクセション「指輪をはめたい」のライヴを彷彿させて感動的だった。
何度でも書くが、もしCHABO BANDが今もコンスタントに活動したら、いったいどんな作品を生み出し、どんな演奏をライヴで聴かせてくれるのか。それを想像すると凄いものがある。できない理由が、単に忙しいメンバー各々のスケジュールであるならば、日本の音楽界にとっては間違いなく大きな損失だと思う。
今のところは今夜のライヴには次がない。このことが本当に残念だ。これまで長くCHABO BANDを観てきているが、4年前は演奏ではなくメンバー紹介に感激して泣きそうになった。それくらい自分はこのバンドを待っていたし、望んでいることをあらためて思い知った。毎回、3人のMy Old Friendを高らかに、誇らしげに紹介するチャボはとても素敵だし、そのFriend達は、久しぶりなのに、いつもまるで長いツアーを続けてきたかのような演奏をし、最新のチャボを余すことなく表現してくれ、僕の思いと想いに完璧に応えてくれるのだから。
理想は、自分のバンドがあって、ツアーやって、レコードつくって、ちゃんとお客さんがいてくれて…
やっぱり自分のバンドっていうのは最高よ(仲井戸麗市 / 2015年)
BANDが はじまるぜ
BANDが 動きだす
CHABO BANDのテーマで歌われているように、BANDが始まり、動いた最高の夜だった。願わくば、BANDが続いていきますように。