見出し画像

〜花をうたえば〜お寺でSinger Song Marimba Vol.Ⅷ 新谷祥子 LIVE 八王子龍見寺本堂 2024.06.02.

昨年は足を運べなかった龍見寺。2021年以来だから訪れるのは実に3年ぶりなので、これまで以上に楽しみにしていたライヴだった。

3年ぶり

お寺でマリンバを弾き打ち " 花 " を歌う。お寺はもちろん木造建築。外の木々と花、そして6月の風と雨さえも演出の一部となるステージ。このことを思うだけでイメージが広がってゆく。龍見寺の環境を知っている人ならば、きっとこの気持ちをわかってくれるだろうと思う。

これまでもライヴで披露されたことがあるPYG「花・太陽・雨」とベット・ミドラー「The Rose」のカヴァーと作品化されている「壇の花」「ナサレの川」「風よはこべ」のオリジナル以外は、ほぼ初披露だったのではないか。オリジナルも過去の曲は取りあげず、新曲を中心にしたプログラムになるのが新谷祥子のライヴなので、いつも通りではあったのだが、それでも、可能な限りやりたいことを詰め込んだであろうことがわかる、バラエティに富んだ内容だった。お寺とは思えない山寺紀康さんによる音響の素晴らしさも変わらずで、心地よい環境と音で彼女の世界を存分に楽しむことができた。

セットされた楽器は相変わらずの迫力

カヴァー曲は、PYGとベット・ミドラー以外にも寺山修司、ピート・シーガー、加藤和彦、矢野顕子から藤井風まで豪華な顔ぶれ。さらに沖縄民謡がここに加わるし、その合間には生まれたばかりの新曲が挟まれる。アンコールを含み全19曲。選曲はバラバラなのだけれど、テーマに沿った彼女ならではのアレンジで、見事な統一感を持って聴かせてくれるから、散漫な印象にはまったくならない。どこをどう聴いても新谷祥子の音楽になっている。

前半を締めくくる2曲がよかった。まずは「The Rose」。賛助出演の西﨑彩衣さんのヴィブラフォンとマリンバの相性がバッチリなアレンジで、美しくも緊張感にあふれた聴き応えある演奏だった。そしてオリジナルの新曲「冷たい雨」。マリンバの弾き歌いという独特なスタイルのため、たとえばピアノやギターの弾き語りとは音や歌の印象が大きく異なる。この表現が適切なのかわからないが、聴くだけでなく " 見る・体感する " と言うライヴなので、彼女の音に慣れていないと、最初からひとつの曲や歌として捉えるには時間がかかると思うのだ。実際に、超メジャーな曲のカヴァーであっても、紹介がないと何の曲なのかが途中までわからず、サビの歌詞やメロディでやっと理解できた…という経験をしてきている。ただ、そんな彼女のスタイルでも、一発ですべてが伝わってくる曲もある。「冷たい雨」は、そんな僕が好きな新谷祥子だった。まだいちどだけ聴いた印象でしかないが、また聴きたいと思わせてくれるマイナー調が効いたいい曲だった。

マリンバだけではなく、打楽器奏者としての新谷祥子も堪能できた。目の前で聴くそれは大迫力。叩く楽器のナマ音は最高だ。

今回のテーマは「花」

まさに手作りで始まったコンサートだし、回数を重ねた今もそれは変わっていないが、音響も含めて、間違いなく本格的なものになってきている。以前、" 音響を担当する山寺さんにより、お寺がライヴハウスになったのだ " と書いたことがあるが、主催のたんぽぽの輪の皆さんのチカラも忘れてはならない。この素晴らしいコンサートをこれからも続けてください。

終演後に配られたプログラム


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?