ライブハウス其のニ
童貞を卒業した当時の私は猿のようになって、バンドでのスタジオ代や楽器代ではなくラブホテル代を稼ぐためにバイトを頑張っていた
ライブハウスには相変わらず遊びに行くが早くセックスがしたくて彼女の定時制学校帰りに待ち合わせをしてホテルに行ったり実家に連れ込んだりしていた
そんな猿化した私にライブハウスの店長が「レッドツェッペリンの全アルバムがデジタルリマスターされてボックスセットで発売されるぞ!」という当時の私には耳馴れない言葉で熱く説明してきた
まず、デジタルリマスターという言葉の意味がよく分からなかった
レッドツェッペリンもライブハウスから貰ったカセットテープを聴いて初めて知ったバンドで「何だ?このパワフルでルーズで暗い影があるバンドは!?」ってな感想だったので
そこまで欲しくはなかったのだけど、どうも気になりだして当時三万円超えで高校生の私にとって高い買い物だったが購入した
レッドツェッペリン全てのアルバムを実家のCDラジカセで聴いているうちにズブズブのツェッペリン沼のようなものにハマり出した
あまり健全な高校生の精神状態ではなかったのかもしれない
猿化から脱した私は当時の彼女に飽きたのか、あまり連絡をしなくなった
そうこうしていると彼女が別の男を好きになってしまったみたいで振られてしまった
そんな時期に当時のバンドメンバーの家に遊びに行った時に二人とも煙草を切らせてしまった為、何でもいいから煙草くれと言ったら封が空いてるパーラメントを1箱持ってきた
一本吸おうと箱を開けると、パーラメントではなく初めて見る煙草が入っていた
そんなモノを見たのは初めてだったが、丁寧に巻いてある先っぽが細くすぼまった手巻き煙草を見ていると好奇心には勝てずに一本頂いた
帰りはフラフラして酒とは違う感覚に襲われたが心地よくもあった
正直印象が変わった、世間では廃人になるだとか言われていたが
どうやら、大したことあるのと大したことないのがあるようだ
その辺りの話は詳しく書くと長くなるのでやめておきます
しばらくツェッペリン沼にはまっていると世の中ではニルヴァーナというバンドがデビューした
ズモォというノイジーなギターに聴きやすいメロディに暗い歌い口調に単純明快なドラム
どうやらグランジというジャンルらしく影響された人達がボサボサのロン毛に髭にスパッツに短く切った軍パンを重ね着してネルシャツを羽織っていた
沢山の量産型グランジが出てきた時期になっても私は相変わらず貰った沢山のカセットテープを聴いて満足していた
ライブハウスの店長とPAの二人が店が休みの日に遊びでセッションしていた
暇な私はボケっと見ていたら
ギタリストの店長とドラマーのPAの演奏は高い演奏技術で私の度肝を抜いてくれた
少ししてPAの人から「お前叩いてみろ」と言われたので叩いてみると当時の私の叩き方の悪い癖を全て指摘されて改善する為の練習方法を教えてくれた後「お前才能ないからドラム止めた方がいいよ、何か違う事しな」と言われてしまった
しかし若い人に、そういう言葉は余計に燃えてしまう
その日を境に寝ても覚めてもドラムの練習をひたすらした
少し病気なのか?って位に練習した
その時期に隣のクラスの同級生の友人から川崎クラブチッタにライブに行くから一緒に行かないか?と誘われた
スタークラブを見にチッタには何度か行ったが、当日は雰囲気がいつもと違い殺気立っていた
GBHというハードコアパンクのバンドらしくモヒカンやスパイキーヘアの頭に鋲つき革ジャンにダイブの嵐
ひたすら早いビートに叫ぶボーカルで、よく分からなかったが何かハートに訴えてくるモノは感じた
生まれて初めてダイブも経験した
これはオッサンになってしまった私が昔を美化しているだけかもしれないが、当時のダイブは危ない倒れ方した人なんかも起こしてやったりしていたし何よりも飛び方?がキレイだった気がする
あのダイブってもんは乗っかる人と乗られる人の協力があって初めて成り立つ行為だと思うので場の空気を読む力が必要とされる
全然盛り上がってないのに乗っかってきたら「今じゃないだろ!ボケ!」ってなるのでキレイにダイブはできない
当時はそんな空気を読まずにダイブする事を目的とする野暮?な客が居なかった気がする
勿論、パンチ合戦やモッシュ等ポゴダンスはギリギリあったっけ?
まぁ、色々な楽しみ方で各々が楽しんでいた時代で私も旧新宿LOFTなんかにもライブを見に行って沢山暴れたし勿論返り討ちにもあった
そのうち高校も卒業に近づき周りの人間も将来の事を真剣に考えて行動するようになってきた
私はライブを次は何処でやろう?等と同級生から心配されそうな卒業間際を過ごしていた
こんな感じでセックス、ドラッグ、ロックンロールを私にくれたライブハウスだが
私が高校卒業する手前で潰れた
経営者のバンドメンバーの父が騙され全財産取られてしまったのだ
おそらく数億は騙しとられているとは思うが所詮、世の中は喰うか喰われるかだ
すっかりオッサンになってしまった私だけど、今でもライブハウスの内装も当時の匂いも雰囲気も思い出せる
私のライブハウスの話もここで終わると思いきや、この後また私の人生に別のライブハウスが登場する
ここまで書いて、そろそろ近所のスナックに飲みに行きたくなったので
続きは後日また書きます。