大学における自殺予防とメンタルヘルス支援の取り組み
こんにちは、相談支援専門員で独立を目指す、ソーシャルワーカーのAoです。今回は今年の8月5日に全国大学メンタルヘルス学会より出された、「大学における自殺予防の手引き」についてまとめてみました。
原本こちら
https://jacmh.org/img/j_yobou.pdf
大学生活は学業だけでなく、生活環境や人間関係の変化によるストレスが学生に重くのしかかる場面があります。その中で、メンタルヘルスの問題が増加・複雑化し、大学としての自殺予防対策がますます重要となっています。ここでは、大学が実施すべき具体的な自殺予防策とメンタルヘルス支援の取り組みを紹介します。
1. 学生向けの自殺予防教育
自殺予防のためには、学生に対するメンタルヘルス教育が重要です。これは、ストレスマネジメント、援助要請スキル、他者との円滑なコミュニケーションといった日常生活に役立つスキルを教えるだけでなく、ゲートキーパー養成研修として、友人や仲間のサポート役としての役割を学ぶ機会も含まれます。これらの取り組みは、特に新入生向けに早期に導入され、その後も繰り返し実施することで予防効果を高めます。
2. 教職員への研修とサポート
教職員は、日常的に学生と接する機会が多いため、自殺リスクに気づくためのスキルが求められます。研修では、うつ病の兆候、自殺リスクの高い学生のサインを認識し、初期対応を学ぶことが重要です。これにより、早期発見が可能となり、必要に応じて専門家に繋ぐ対応が迅速に行えるようになります。ゲートキーパーとしての教職員の役割は非常に大きいです。
3. 啓発活動の推進
大学内での啓発活動は、学生にメンタルヘルスと自殺予防の重要性を理解してもらうために欠かせません。新入生オリエンテーションや定期的なガイダンスに加え、ポスターやリーフレット、SNSを活用した情報発信が効果的です。これにより、学生が自ら相談に行くきっかけを作り、必要な支援を受けやすくなります。
4. 家族のサポートと連携
大学生は家族から離れた環境で生活することが多く、家族との距離が生じやすい時期です。家族が学生のメンタルヘルスに気づき、適切に対応できるようサポートを行うことが重要です。大学や専門機関と連携し、学生の状況を把握して、必要な時には早期に介入できる体制を整えることが求められます。
5. ピア・サポートの重要性
ピア・サポートとは、学生同士が支え合い、メンタルヘルスの問題を気軽に相談できる環境を提供する制度です。ピア・サポーターは、同じ立場の仲間として、リスクの高い学生に寄り添い、専門家に繋ぐ役割を担います。この支援は、特に援助を求めるのが難しい学生にとって大きな助けとなります。
6. 安全な居場所作り
大学生活で孤立しやすい学生には、安心して過ごせる「居場所」が必要です。フリースペースやサロンなど、学生が自由に利用できる場所を提供することで、孤立感を軽減し、メンタルヘルスの維持に役立てます。また、対人関係に悩む学生が気軽に利用できる、静かなスペースも用意されることが望まれます。
7. スクリーニングとカウンセリング
メンタルヘルスのスクリーニングは、希死念慮やうつ病のリスクを早期に発見するための重要な手段です。健康診断や新入生オリエンテーションに合わせて実施され、リスクのある学生は保健管理センターやカウンセリング室で専門的なサポートを受けます。定期的なスクリーニングが、学生のメンタルヘルス改善に寄与します。
8. 自殺企図後の対応
自殺未遂後の学生への対応は、安全確保と継続的なサポートが重要です。保健管理センターや精神科医と連携し、適切なケアを提供することが求められます。学業面でも支援が必要であり、個別対応を通じて学生が復帰できる環境を整えることが目指されます。
9. 情報共有と連携
大学内の教職員やカウンセラーが連携し、学生のメンタルヘルスリスクを包括的に管理します。教職員が日常の中で気づいた変化を共有し、必要に応じて専門機関へ繋ぐことで、早期対応が可能となります。自殺予防は大学全体で取り組むべき課題であり、連携が鍵となります。
10. 大学の物理的対策とガイドライン
大学としては、物理的な対策(高リスク地域へのアクセス制限など)や自殺予防に関するガイドラインの整備も重要です。学生が利用できる相談窓口の明確化や危機対応マニュアルの配布によって、迅速かつ適切な対応ができる環境を作ります。
11. ポストベンション(自殺後の対応)
学生の自殺が発生した後には、影響を受けた学生や教職員へのサポートが必要です。カウンセリングの提供や、今後の予防策の見直しを行い、同様の事態が起こらないようにする対策が求められます。ポストベンションは、大学全体で取り組むべき重要なプロセスです。
まとめ
大学における自殺予防の取り組みは、教育や研修、啓発活動だけでなく、学生一人ひとりのメンタルヘルスに対する包括的な支援が必要です。大学全体での連携やサポート体制の強化が、学生にとって安心して過ごせる環境を作り、自殺予防の一助となることを期待します。