東京で生きるのだ
私が若かりし頃 20代前半 地元神戸での生活に嫌気がさし この街を離れようと決めた。
と言えば聞こえは良いけれど 実際は実家暮らし
仕事も長続きせず 将来の夢などもない。
家を出るなら東京だぜ! と変な妄想を抱いて上京を決めた。とは言え金もないしコネもない。
自分の持ち物で金に変えられるものと言えば 中古で買った車くらいしかなかった。
それで当時流行っていたカーオークションで売りに出したが 誰からも落札されず 売るはずだった車に乗って帰った。
売れなかった悲しみと売れなかった喜びが複雑に頭をかき乱した。
いやいや 売れないと困るのだ。仕方なくいつもお世話になっている自動車修理工場の専務に相談した。その専務 東京の美大出身で 車の修理より絵を描くのか好きな人だった。
専務が私に「いくら欲しいの?」と尋ねられ私は咄嗟に「40万」と答えた。
専務が「ちょっと待っとき」と言い残し しばらくして現金40万円をテーブルの上にポンと置いた。 「これで東京に行って来なさい」続けて「そして思う存分やったら戻っておいで」と。
私の心の奥底にあるモヤモヤしたものを感じでくれたような気がした。感謝しかない。
人生の岐路に関わる大切な人のひとりだ。
今でも感謝している。残念ながら 数年前に膵臓癌で亡くなってしまったが もう一度会いたかった。さぁこれで資金は出来た!
東京へ行くぞ❗️
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