結婚したら、夫が裸族でヤ○ザ映画好きだった件
結婚してみるまでわからないこと、というのは確かにあるもので……。
私の場合、夫が裸族だった、ということだろうか。
私は姉との二人姉妹だから、家に男性は父親しかいなかったし、その父もわりと身だしなみや躾にはうるさい人だったから、いつもきちんとしていないとダメだった。たとえば食事の時なら、箸の持ち方はもちろん、お茶碗の持ち方、姿勢なども注意された。
父は毎週日曜の夜には家族全員の靴を磨いてくれるような人でもあった。洋服も素材の良いものをパリッと着ていたし、当然「風呂上がりにパンツ一丁でうろうろ」のようなタイプではなかった。
だから、夫と暮らすようになって、次第に夏の暑さを感じるようになった頃、夫がトランクスだけで上半身は裸のままうろうろするのを見た時は衝撃を受けた。
男の裸を見て「いやん」と手で目を覆うような年齢ではないが(昭和の少女漫画によくあるシーン)、とにかく「裸でうろうろする人間」を見たことがなかったものだから、単純に嫌悪感で「いやーーーーっ!」となった。
「なんで服着ないの?やめてよ」
私が言うと、夫は逆に、何を言っているんだこいつはという顔で、「暑いねん」と言う。
「クーラーつけたらいいやん」
「このほうが気持ちいいねん」
こんなやりとりを何度もしたが、頑なに夫は服を着ようとしない。そのうえ、私が少し折れかけたのを感じたのか、ある時、夫は裸のままご飯を食べようとしたのだ。これにはさすがに私も怒鳴った。
「ご飯の時はちゃんと服着てよ!行儀悪い!!」
わなわなと震えるほど怒っているのを見て、夫も面倒くさそうではあるが、なんとかTシャツを着てくれた。
しかし、食事以外の時は目を離すとすぐに脱いでいる。
私は作戦を考えた。
これは怒るのではなく、ちゃんと話をして理解してもらおう。
そうだ、子供の頃から学んできた「人の立場に立って考えよう」「人の嫌がることはしないでおこう」というやり方でいけばいいんじゃないか?
ある時、またもや裸になっている夫と向き合い、優しい口調で話してみた。
「ねーねー、ちょっと逆の立場になって考えてみてね」
「ん?なに?」
「もしさー、私がパンツ1枚で、裸で家の中うろうろしてたらどう思う?」
夫はしばらく考えていたが、にっこりしてこう言った。
「……うれしい」
あかん!これはあかん。喜んどる!
「やって、やってー。かおりも裸族になろうよー」と無邪気にはしゃいでいる夫を見てがっくり。
作戦失敗を悟り、私は急きょ方針を変えて泣いて訴えた。
「もうお願いだからやめてよ……。裸の人がいると落ち着かないんよ……。裸族と結婚した覚えはないのよ……」
何度も何度も言い続けると、もう面倒だと思ったのか、渋々だが「なるべく着る」と約束してくれた。
夫は男ばかりの三人兄弟。そういうことも影響しているのかもしれないが、夫が裸族だったことは結婚して一番の驚きだった。
そういえば、もう1つギョッとしたことがある。
夫はいつもニコニコしていて優しくて、私の両親や友達からの評判もよいのだが、とにかく「不良」の漫画が好きだ。まあ、世の中にたくさんあるということは、多くの男性が実は「不良」に憧れているのかもしれないとも思うのだが、夫は結婚した時に『ろくでなしBLUES』と『今日から俺は!!』を全巻持ってきた。バイブルらしい。
結婚後もいろいろと不良漫画を買い集めていて、漫画の置いてある納戸を見ると、だいたいワルそうなやつが表紙に描かれた漫画ばかりだ。
それはいい。
結局私も『ろくでなしBLUES』と『今日から俺は!!』を全巻読んだから(笑)。不良漫画だけど、怖くなかったし、面白かった。
それに、漫画はこちらが読まなければ何の影響もない。
本当に嫌なのは、ヤクザ映画が好きなことだ。最近は『日本統一』というシリーズものにハマっていて、よくNetflixで見ている。
「今日は広島を攻める日や!」などと言いながらウキウキしているのだ。
最初は「たまのことだし、いいか……」と思っていたのだが、いつまで経っても終わらず、休みの日など何時間も見ているので「それ、何作あるの?」と聞いてみた。
「めっちゃあるで。44かな」
えっ!そんなにあるのか……。
書いたことはないが、私はわりと強めのHSPで、特に「人に共感しやすい」というか、感情移入の仕方が異常なので、暴力シーンがまったく見られない。
いや、これが“アクションシーン”に近いような、殴り合いの「ケンカ」というわかりやすい暴力ならいいのだが、脅しや拷問のように精神的に恐怖で追い詰めるようなものがダメ。(笑わせるのが目的の、いわゆるドッキリ番組でも、怖がらせるようなドッキリは見られない)
人が痛がっていると自分も痛くなるし、あまりに怖いと夜中にうなされる。小説や漫画も怖いシーンがくると、ストーリーそっちのけで何ページも飛ばし読みする。ドラマでも痛いシーンが出てくると2階へ走っていって耳をふさぎ、「怖いところ終わったら呼んでー!」と隠れているくらいだ。
それなのに、清々しい日曜の朝っぱらから
「なんじゃ、こらーーー!」
「殺すぞ、おらー!」
というヤっちゃんたちの恐ろしい声がリビングのテレビから聞こえてくるのだ。
「お願いだから、朝から『日本統一』を見るのはやめて!」と夫に頼んだら、それ以降は、朝はもちろん見ないし、私が家にいない時を狙って見てくれるようになった。
しかし、たまに私がNetflixで「映画でも見ようかな」と思ってテレビをつけると、おせっかいなNetflixは視聴者の好みを考えて「おすすめ」を挙げてくるので、最初の画面がこんなことになる。↓
いやだ、もう……
(と言いつつ、面白かったので写真を撮っておいた)
好きで結婚した相手でも、やっぱり他人だから、一緒に暮らしてみないとわからないことってあるものだ。
ただ、そういう発見が面白くもあるし、互いに忍耐や譲歩を学びつつ成長していけるのが、結婚生活というものなのかもしれない。