マガジンのカバー画像

ライターとして生きていく

60
1996年よりフリーランスのライターとして活動しています。日々の仕事の中で感じたことや学んだことなどの記事をまとめています。ライター初心者の方にとって、何か参考になれば幸いです。
運営しているクリエイター

#酒蔵

あの人をいつまでも応援できる私になれるように

先日、1通の葉書がポストに届いた。 印刷された文字が並んでいたので、どこかの企業からの形式的な暑中お見舞いか何かだと思った。 差出人を見ると、3、4年前に取材した酒蔵の杜氏さん(製造責任者)の名が記されている。 何だろうかと内容を読んでみると、「退職のお知らせ」だった。 酒蔵にいた数年間に関わった人の名刺を見ながら葉書を送ったのだろうが、内容は形式的なものではなく、「ライターの私」へのメッセージが空きスペースにきちんと添えられていた。 「お元気ですか?  心に残る取材でし

書き続けていると、たまに素敵な出来事もある

かなり時間が経ってしまったが、4月末に私がライターとして執筆している日本酒業界誌『酒蔵萬流』40号が発行された。 この号では酒蔵の記事を2本書かせていただいたが、そのうちの1本は親戚のおじさんが働いていた酒蔵だった。 上の記事を書いた時は発行前だったので社名を伏せていたが、徳島県の芳水酒造という。 夫のお父さんのお兄さんがこの蔵で長く働いていたが、もう何年も前に退職されている。 たったそれだけのつながりにも関わらず、取材に行って書いた記事が雑誌に載ると話すと、お義母さんが

「おじさん」が働いていた酒蔵へ

先週、徳島へ出張取材に行って帰ってから、少し体調が悪い日が続いている。前週には岩手もあったし、疲れがたまっているのかもしれない。 7年以上やってきたレギュラーのライティング案件が、一年以内になくなると聞いたショックも大きかった。私が切られるのではなく、企業の方針と予算の都合により、プロジェクト自体が終了する。月5万円程度の案件ではあるが、毎月の定期収入だったので、このマイナス5万円はかなりイタイ。 それに、長年やってきたので、なくなること自体の淋しさもある。 もういよいよ

今年もまたこの場所に帰って来られた

ピンと張り詰めるような冷たい空気の中、和釜の上に置かれた甑(こしき)からもうもうと白い蒸気が上がり、天窓に吸い込まれていくのを寒さに震えながら見ていた。 寒い。酒蔵は底冷えする。 ポケットの中のカイロを手で探りながら、白い蒸気を見つめる。 朝9時半。もうすぐ酒米が蒸し上がる。少しずつ蔵人が甑のまわりに集まってきて、蔵の空気が動き出す。 いいな、この瞬間。 ご飯が炊ける時のような少し甘い匂いを嗅ぎ、胸の奥と目頭が熱くなっていくのを感じていた。 やっぱりこの景色が好きだな、

本日、日本酒業界誌『酒蔵萬流』30号が発刊されました!

私がライターとして携わっている日本酒の業界誌『酒蔵萬流』の30号が本日発刊された。 2年前まではライター2人でやっていたので、酒蔵だけでも毎号3~4蔵は書かせていただいていたのだが、ライターが4人になったので今の担当は2蔵くらい。減って寂しいような気もするが、書いていると身を削られるので(難しすぎて)、これくらいがちょうどいいかなとも感じている。 noteを始めた理由として、『酒蔵萬流』の取材の振り返りを書いておきたいということもあったのに、怠惰ゆえ、まだ一度も書けていな