自動化で成果を出すための評価指標設定のポイント
RPA、ひいてはインテリジェント オートメーション(IA)の導入は、企業の業務効率化やコスト削減に大きく貢献します。しかし、その効果を正確に評価し、ビジネス上の価値を最大化するためには、適切な”KPI”の設定と測定が不可欠です。
”KPI”(Key Performance Indicator:主要業績評価指標)とは、ビジネスの目標達成に向けた進捗を測定するための重要な指標のことです。
KPIを明確にすることで、自動化プロジェクトの成功を客観的に判断し、さらなる改善策を見出すことができます。
本稿では、代表的なKPIと、それらを定める上での注意事項について詳しくご紹介します。
1 代表的なKPI
KPIは大きく分けて、財務指標、生産性指標、人材と顧客指標の3つのカテゴリがあります。これらのカテゴリごとに、具体的なKPIの例をまとめた図を以下にご用意しましたので、ご参照ください。
2 KPIを定める上での注意事項
2.1 企業戦略との整合性
KPIは企業の戦略目標と一致していることが重要です。戦略と整合したKPIを設定することで、関係者の関心を高め、自動化のメリットを効果的に伝えることができます。さらに、選択したKPIの目的と主要な戦略目標との関連性を示すことが重要です。
2.2 定期的な見直し
ビジネス環境や企業戦略は常に変化しています。また、新たなデータが利用可能になることで、測定可能な項目も増える可能性があります。そのため、KPIは一度設定したら終わりではなく、定期的に見直しを行い、現状に適したものに更新していく必要があります。
2.3 抜け漏れを無くす
自動化の効果を評価する際、抜け漏れ無く正確に効果を捉えることが重要です。以下では、コスト削減の対象に含まれる要素や、直接的・間接的なメリットについて詳しく説明します。
2.3.1 コスト削減の対象に含まれる要素
FTE削減だけではない、コスト削減の全体像
多くの企業は自動化によるコスト削減を人月工数(FTE)の削減効果だけで評価しがちです。しかし、それでは自動化によるメリットを過小評価することになりかねません。以下ではコスト削減の基本的なパターンと、それらの中で見落としがちな要素を考えていきましょう。
削減
リソースの再配置や外部委託の見直しを行うことで、コスト削減が可能です。他業務への再配置や自然減、外部委託の縮小が含まれます。これにより削減されるコストは、給与や福利厚生費、オフィススペースの維持費などですコスト回避
将来的に発生するはずだったコストを未然に防ぐことを指します。例えば、新製品の発売や季節的な業務量の増加時に新たな人員を雇用せずに自動化で対応できれば、その人件費や採用コストを回避できます。人材の有効活用
自動化によって生まれた余剰時間を他の高付加価値業務に充てることで、間接的なコスト削減や収益向上につなげることができます。例えば、顧客対応の改善や新サービスの開発に人材を投入することで、企業全体の競争力を高めることができます。
見落としがちなコスト要素
採用・研修コスト:新たな人材を採用し、研修するための時間と費用。(既存の従業員が新入社員を研修する時間も削減されます。採用コストは人事支出全体の15%を占める可能性があります。)
残業代やシフト手当:業務量が多い場合に発生する追加の人件費。
オフィススペースや設備コスト:スタッフが増えると必要となる物理的なスペースや設備のコスト。
福利厚生費:保険や年金、その他の福利厚生にかかる費用。
エネルギーコスト:稼働時間の短縮や効率化により節約できる電力やその他のエネルギーコスト。
これらのコストは、直接的な人件費以外にも企業の財務に影響を与えるため、コスト削減の評価に含めるべき重要な要素です。
2.3.2 直接的メリットと間接的メリット
直接的メリット:数値で測定可能な効果
直接的メリットは、自動化に直接起因する具体的な成果であり、簡単に計算できます。
正確性と品質の向上
デジタルワーカーは設定されたルールに従って正確に作業を行うため、人為的なミスをほぼゼロに抑えることができます。生産性の向上
デジタルワーカーは24時間365日稼働可能で、人間の約5倍の稼働時間を持つだけでなく人より早く正確に作業できます。
間接的メリット:数値化が難しいが重要な効果
自動化によって間接的に得られる効果で、数値化が難しい場合もありますがビジネスに大きな影響を与えます。
顧客満足度の向上
製品やサービスをより速く、より簡単に、間違いなく提供できれば、顧客満足度にプラスの影響を与えます。また、苦情や顧客の離脱も減少します。満足した顧客はあなたの会社の評判を高め、友人や同僚に勧めてくれるかもしれません。これらすべてが収益にプラスの影響を与えます。「一度で正しく」
業務が一度で正確に行われることで、顧客からの問い合わせやクレームが減少します。これは生産性と収益性(エラーと手直しの排除)だけの問題ではありません。高い品質を提供し、約束したものを約束した時に確実に届けることができると顧客に知ってもらうと、最終的にはより大きな顧客満足度につながります。さらに、一度で正確に行われることで顧客から会社に問い合わせる必要がなくなるため、コンタクトセンターへの連絡を大幅に減らすことにもつながります。従業員満足度の向上
より報酬の少ない付加価値の低いプロセスやタスクを自動化することで、従業員全体の仕事の満足度を高めることができます。従業員の高い仕事満足度は会社に利益をもたらし、生産性向上、離職率低下、仕事のストレス軽減につながります。リスクの低減とコンプライアンスの強化
自動化されると”プロセスが簡素化”され、チェックや人による判断が少なくなり、全体にかかる時間が短縮されます。また、監査/コンプライアンス担当者の作業を簡素化し、レビューの頻度を減らすこともできます。規制違反による損失や罰金を抑制できる可能性もあります。プロセスの洗練
プロセスが洗練されることで、顧客に価値を創造し提供する方法を改善することができます。人の能力を解放することで、従業員は自分たちが働くプロセスを最適化する方法を検討する余裕ができます。そして、イノベーティブなプロジェクトに取り組む余力を得て、それらがもたらすメリットを享受できます。
間接的メリットの重要性
間接的メリットは直接的メリットと同様、企業の持続的な成長に不可欠です。これらの効果は一見すると数値化が難しいため評価されにくいですが、長期的な視点で見るとビジネスに大きな影響を与えます。そのため、KPIを設定する際には、間接的メリットも含めて総合的に評価することが重要です。
3 結局どうしたらいいのか?
RPAやIAの導入効果を最大化するためには、自社の戦略と業務に適したKPIを設定し、継続的に見直していくことが重要です。また、コスト削減だけでなく、直接的・間接的メリットや定性的な効果も含めて総合的に評価することで、真のビジネス価値を引き出すことができます。
具体的な指標の選定やKPIの具体例についてさらに知りたい方は、ぜひ弊社のカスタマーサクセスチームまでご相談ください。貴社の状況に合わせた最適なアドバイスを提供いたします。
4 [参考]Forrester TEIレポート
以下では、SS&C Blue Prismのインテリジェント オートメーション・プラットフォームに関するForrester Consulting社の2024年Total Economic Impact™(TEI)調査をご覧いただけます。
https://www.blueprism.com/japan/resources/analyst-reports/forrester-tei-2024/
こちらのレポートでは、一般的に考えられる生産性の向上にとどまらず、IAがどのように収益の向上に寄与したか示し、さらには定量化が難しいと思われるコンプライアンス強化、従業員満足度の向上も”金額に換算”して算出しています。レポートはすべて英語ではございますが、具体的にどのように金額に換算し計算したかまで含めて解説がございます。よろしければぜひご参照ください。