【8/13】獅子座21度

首を絞めると膣が締まると聞いたことがある。何でそんなことを知ったのかは忘れてしまったが、そういう性癖の人間が存在することは、なんとなく知っていた。
首を絞めてみたいなどと、強く願ったことはないはずだが、不思議と恐怖心や嫌悪感は抱かなかった。実のところ、自分にもそういう欲望があるからだろう。

女の白く細い首に両手を添えて、親指に力を入れた。あくまでこれは合意の上のプレイなのだ。それでも力を入れすぎないように、慎重に力を込めた。
女の体が一瞬びくんと跳ねて、苦しそうな嗚咽が漏れた。
女の声とは思えない、汚い音だ。
全身が硬直していくのがわかる。それと同時に、女の秘部のなにかを絞り上げるような胎動を感じていた。

女の虚な目を見ながら、俺はなぜか昔のことを思い出した。
母の実家で、祖父が鶏を締めていた。
流れ出る血、鶏の虚な目、首を落としたはずなのに、バタバタと動く鶏の体。
首のない鶏は、筋肉の反射運動によって動いているだけで、実際にはやはり絶命していて意思などもはやない…というのは後から知った。

男も女も絶頂を迎える時の、体に起こる現象はある程度決まっている。喘いでいても、演技はわかるものだ。

女の体に汗が纏わりついて、小刻みに震え出した。絶頂の予兆だ。
絶頂は意思によって起こるものではない。外的刺戟に対する反射的な反応だ。
生きている人間と死んだ鶏の区別も徐々に曖昧になっていく。
脚がピンと伸びている。女は獣のような声を上げた。まるで鶏の断末魔だ。
鶏の思い出は弾け飛んで、視界が飛び散った。
白く歪んだ欲望を女の腹に吐き出した。

絶頂を迎えた女は、天を仰いだまま、浅く息をしていた。時折、咳き込むが、次第に意思を取り戻していった。

ーセックスの時に首を絞められてみたいです。

女は、うちに秘めていた欲望を告白した。俺はその欲望を叶えてやることにしたのだ。
だから、今、俺たちはここにいる。

女はよろよろと起き上がって、俺の首に手を回した。その仕草は、美しく羽根を広げる鳥のようで、いつかは飛び立って行くような気がした。
そっと抱き返して唇を吸った。
少し声が漏れた。今度は可愛らしい声だった。

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