蟹座16度

子供の頃、河原の近くの空き地がもっぱらの遊び場だった。
キャッチボールをしたり鬼ごっこをしているうちは可愛げもあったように思うが、ある日を境に、河原近くの空き地であるものを探すようになった。

雨ざらしのボロボロになったポルノ雑誌だ。青年向けの漫画雑誌もあった。裸の女が見たこともない表情をしていた。
大人になったらじぶんもこういうことをするんだと漠然と考えていた。

タバコの煙を見ながら、ませた子供時代を思い出していた。口を丸く開けて、煙を輪っかの形にしてみた。少し歪な形になった。意味もなく、こんな遊びをする。まるでガキだと思った。

隣で女が寝息を立てている。ポルノ雑誌の女の顔はもう記憶からかなり消えてしまっていたが、今となっては、案外年のいった女だったとわかる。隣で眠る彼女はまだ若く、肌は、男の白い欲望さえ弾くような艶があった。

吸い終わったタバコを灰皿の上で揉み消した。前に彼女がタバコが完全に消えていないのに気づいて、そのタバコを揉み消したことがあった。タバコを吸わない人間のこの仕草は、なぜこんなにも様にならないのだろう。だが、そんなつまらないことで彼女への愛着が薄れたりはしない。

薄手の掛け布団を剥いで、産まれたままの女の姿をまじまじと眺めていた。彼女はもぞもぞと少し動いたがまだ眠っているようだ。起こさないように彼女を仰向けにした。

乳房は小ぶりで綺麗に上を向いている。先端の蕾を摘んで少し力を入れると、いつも可愛い声を出す。彼女は少し恥じらいがあって、ポルノ雑誌の女はもっと生々しかったような気がする。
かすかなくびれ。形のいいへそ。このあたりはくすぐったいという。
その下の茂みの奥は、俺が触れる時はいつもかすかに湿っている。クリトリスに触れると、劈くような声を出す。秘部からは女の欲望が溢れ、膣に指を捩じ込む。1本、2本と増やしていく。
絶頂に近づくと声が掠れていく。呼吸がとまるんじゃないかと不安になったことがあったが、そんな気持ちを何も解さず、女は果ててしまう。
そして、己の槍を女に突き立てる。絶頂を一度迎えた後の方が良い。それでまた女は果てる。

女の肢体を眺めながら、彼女とのセックスに想いを馳せる。きっと自分は幸せだ。願わくば、彼女もそうであって欲しいと思う。

眠る彼女にキスをした。タバコを吸う人はキスでわかると彼女が言ったことがあった。
唇を離しても、まだ彼女は眠りから覚める気配はない。布団を掛けて彼女をそっと抱きしめた。

キスで目が覚めるなんて、おとぎ話だ。河原に捨てられたポルノ雑誌も、今となってはおとぎ話のようなものだ。
男は目を閉じた。
おやすみ。眠る彼女が返事をしないことはわかりきっていた。
しばらくすると、男も寝息を立てていた。

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