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セイコー LM ロードマチックのかんぬき
今回は、販売を検討しているロードマチックのメンテナンスの際のお話しです。この個体はケースに傷やくすみが目立ち、これはさすがに磨いた方がいいな と判断しケースを磨き直すことにしました。その際、ムーブメントを外してケースを磨き、再び組み立てていたのですが、最後にリューズを取り付けた際に気がつきました。
1段引きや2段引きが全く機能しなくなったのです。
この個体は以前 ファンクションチェックをした際このような症状はなかったと記憶してます。普通に日付や曜日の変更が正常に機能していました。そのため、どこで問題が起きているのか原因を探ることになり、裏蓋を開けてムーブメントを分解し始めました。結果的に分かったのは、「かんぬき」がつづみ車の溝にはまらず、ずれていました。
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この問題は今回が初めてではなく、以前にも別の個体で同様の症状が発生したことがありました。
かんぬきが溝から外れてしまうと、リューズの操作が完全に機能しなくなり、全てのパーツを分解し直さなければならなくなります。かんぬきはムーブメントの組み立ての初期段階で組み込む部品のため、修正するには全てのパーツを外し 組み直す必要があります。これが非常に手間のかかる作業なのです。
嫌だなと思う点は、原因が単純に「ずれ」だけである場合でも、それは 組み立ての初期の段階のパーツだと全てのパーツを外して組み直ししなければならない点です。時計の組み立てでは、ほんのわずかなズレが全体の動作に影響を与えることが多々あります。特に機械式時計は非常に精密な構造を持っており、一つの部品のズレが全体に波及することがあります。この繊細さが機械式時計の魅力でもありますが、実際に自分でメンテナンスを行うとなると面倒で目を背けたくなることもあります。
今回はタイムグラファーで測定したところ、遅れや振り角には問題がなかったため、最終的にはかんぬきの位置を修正し、どうせ 外したので裏輪列のパーツを洗浄・注油して再組み立てを行うことにしようと思います。
このように、一つの歯車のわずかなズレが全体に影響を与えるのが機械式時計の難しさであり、同時にそこに魅力も感じます。
何らかの異常が発生して動かなかったものが正常に 動くようになった時の満足感が時計の修理の醍醐味だと思います。
中でも テンプ周りに異常があり秒針が全く動かない状態からテンプが回り始めて動くようになった時は感動します。
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