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コミュ障でも一生のパートナーができるまで⑤

絵が描き終わり、描き終わった事を伝える場面になって躊躇していた。
絵を描く以外に関係性が無いから、また1人に戻ってしまう、そう思っていた。
出来上がった絵を、そんな事を思いながら眺めていると、横の席の佐藤君が話しかけてきた。
「あのさ、前から思ってたけど絵好きだよね」
「え?」
何と返答したものか、未だコミュニケーション能力が育たず、声を掛けらるだけでテンパってしまう。
特に幼稚園の頃のトラウマから、男子との会話は恐怖の対象だ。
だからといって、何も言わないのも返事が無い時の悲しさを知っているのでできない。
「うん、絵は楽しいから」
「そうなんだ、次は何描くの?」
やっと答えたところに、矢継ぎ早にそう言われても困る。
そんな事考えていなかったし、こんなに質問されるとは思っていなかった。
しかも佐藤君は見た目が良く、更に頭も良かったので女子に人気があり、また変な因縁に巻き込まれる可能性が有る。
「決めてない」
何とか答えてやり過ごそうとしていたところに
「できてる!スゴイ!上手」
と興奮リサちゃんが横から入ってきてくれた。
正直、今から見れば下手過ぎて見れたものでは無いのだが、褒められるという今までに無かった経験に、感じた事ない高揚感を感じた。
それだけで存在の全てが許されるかのような、あたたかい気持ちが広がる。
もっと褒めてもらいたいという気持ちと、自分は褒められる様な存在では無いから、調子になのったらいけない、という自戒の念が交互に浮かんでは消えた。

「じゃあ次は俺の番ね」
そんな気持ちが複雑な動きをしている時に不意打ちの発言がでて、更に思考が混沌とする。
佐藤君は、何を考えているのか表情からは何も読み取れない。
そもそも人の表情は、怒りや嫌悪以外の感情以外読み取るスキルがまだない。

そして、これが後に面倒な事に繋がるのだった。

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