見出し画像

新卒、あばれる上司の言葉

新卒で入社した飲食店で出会った上司との話です。

今では店舗数も増えている立派な会社ですが、当時はまだ小さな飲食店だったと思います。

その上司とはSVと呼ばれる複数店舗を統括するスーパーバイザーという立場のIさんです。

Iさんは誰もが恐れるスーパーバイザーです。とにかく恐いのです。

怒鳴るわ、睨むわ、物が飛んで来るわ、胸ぐら掴まれて先輩たちは宙に浮くわ、、、

とにかくやりたい放題の無双状態で店舗をチェックして嵐のように去っていきます。

Iさんが特に厳しいのは「クリンネス」という作業です。
クリンネスとは清掃をするという意味です。
常に店舗をきれいにすることを必要以上に高いレベルで求めてきます。

厨房はもちろん、お客さまをまねくフロアも駐車場も。

とにかくクリンネス!クリンネス!




ある日、スーパー鬼バイザーのIさんが店のチェックにやってきました。

そして事件が起きました。。。

厨房の床に落ちてしまったぞうきんを作業台にポンッ、と置いてしまった先輩がいたんです。

Iさんが見逃すワケがありません。

先輩のところへゆっくりと近づき、ガッ!っと胸ぐらを掴んで先輩は宙に浮きました。
(Iさんは180cmくらいあるんです)

そして怒鳴ったんです。

「なにしとんじゃわれー!落としたぞうきん作業台に乗せんなボケェェェ!どうなるかわかってんかコラー!」

みんなが手を止めて、Iさんと先輩のほうを見ていました。

「いいかよく聞けよ。食べもの扱う作業台に、落としたぞうきん置いてみろ。食中毒引き起こすぞ!そしたらどうなると思う?おうっ?!」

何も答えられない先輩。

「営業停止になるんだよ!そしたら他の店舗もまとめて営業停止になるかもしれんのじゃ!そんなことになったらそこで働く社員やアルバイト、パートの人たちの給料どうやって払うんじゃ?!お前、全員の給料払えんのか?責任取れんのかっ!」



数日後、休憩室でIさんと一緒になってしまいました。(めっちゃ恐い・・)

「あのな、この前のあれお前も見てただろ?会社はたくさんの人の生活を支えてるんだよ。」

いつも恐いIさんが、やさしい口調で話しかけてくれました。

「おまえ一人の行動が、みんなの生活を壊すかもしれないってことはわかっておけよ。想像力を働かせて責任持って仕事しろ。」

タバコを灰皿にこすりつけて火を消して、Iさんは休憩室から出て行きました。




あれから10年経っていまは違う仕事をしていますが、いまでもときどき思い出すエピソードです。

いまもどこかで、Iさんには暴れていて欲しいな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?