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世界は心象スケッチでしかない。漫画「ブルーピリオド」を読んで。

久しぶりに一気読みしてしまった漫画があるのですが。
山口つばささん著書の漫画「ブルーピリオド」です。

味気ない毎日を送っていた不良優等生(ってなんだ?)の主人公が、あるとき絵を描く楽しさに目覚め、葛藤や苦悩を味わいつつも成長していく、”アート”を題材にした人間物語です。

面白かったです。

私が一番好きな巻は10巻です。
こっからはネタバレになってしまいますが、
この漫画の本質とも言えるような印象的なシーンがあります。

大学に入った八虎(やとら)と世田介(よたすけ)は、それまでの受験絵画とは違い、
より手の込んだ表現方法や、高度でスケールした世界観のあるものを求められるようになります。

1年生最後の進級制作展で、一度はそういった作品を制作しようとする八虎と世田介ですが、

2人は最終的に、
とてもパーソナルな世界観のものを絵画で表現することを選ぶんです。

その絵を見た一人の教授が言います、

「この絵って君の個人的体験でしかないってこと?
つまんな!!
そのままじゃ君、何者にもなれないよ!?」


これに対して世田介が一言。

「何者かになる権利はあっても
義務はない...と思います...」




アーティストに関わらず、
誰しもが成功する人生を望み、何かを成し遂げたいと思う。

でも、

そもそも成功ってなんや?

スティーブ・ジョブズみたいな人?

売れなかったら失敗ですか?

フォロワー少なかったら価値ないですか?

ある側面から見たら答えは全部「YES」でしょう。
何かを創るプロでありたいと思うなら、作品を世にさらし、評価され、価値を問わなくてはならない。

だけど、そこに本質を見てしまうのは、
とてもつまらないと思うんです。
自分の人生は自分のものさしでしか測れないよ。
スティーブ・ジョブズが幸せな人生を送ったかどうかは誰にもわからない。

「何者かになる権利はあっても
義務はない...と思います...」


これは単に開き直ってるわけでも、諦めてるわけでも、自己満足で終わらせようとしているわけでもない。
人は何者かになるために生きてるわけではない。


この漫画でもう一つ好きなセリフがあります。

「あなたが青く見えるなら 
りんごもうさぎの体も青くていいんだよ」


そう。
世界は自分の見えている世界でしかない。
自分の感じることが、感情が、思考が、そのまま世界に反映される。

つまり、世界はとても個人的なものだとも言える。

だからこそ、自分と対話し続けて、自分を愛することが、
何よりも大事なことなんじゃないかって思う。

自分が自分を好きでいられたら、こんなに幸福なことはない、って思うから。

とか、そんなことを色々思考できた漫画でした。
アートを通して、主人公たちの内面の変化がとてもリアルに描かれていて、今の時代にとてもオススメの作品です。


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