映画 tick, tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!
ジョナサンはもうすぐ30歳。
成功する者、夢を諦めて現実と向き合う者。
30歳になる前に他の成功者のように結果を出したい…。
人に与えられた時間はそれぞれ決まっている。
直面する不安や焦り。
そのなかで輝くということ。
“生きるということ”その、ヒントに溢れたバイブル的作品!
Netflixオリジナル。
ブロードウェイ・ミュージカル“RENT(レント)”で知られる劇作家“ジョナサン・ラーソン”の自伝的な同名傑作ミュージカルを“イン・ザ・ハイツ”や“ハミルトン”、ディズニー映画の作曲などで知られる“リン=マニュエル・ミランダ”が映画化。
この作品が俳優、作曲家、脚本家など様々な活動をしてきた彼にとって初の監督作品になる。
脚本は映画“ディア・エヴァン・ハンセン”の“スティーヴン・レヴェンソン”、主演はアカデミー賞俳優、スパイダーマン俳優、そして個人的に“岡田将生さん”に見えることがある(笑)アンドリュー・ガーフィールド。
イケメンなだけじゃなく、歌が最高に素敵なんです!
“30/90”のようなポップな曲からバラードまで、曲も歌詞も一級品。
本場ブロードウェイの“二人の天才”が作った至極のミュージカル体験をNetflixで。
あ、ジョナサンと同居してるにゃんこが可愛いのでその子もお見逃しなく!(トイレでジョナサンがHな本に目を奪われてるときにドアを開けるシーンが好き笑)
舞台は1990年ニューヨーク、物語は金曜日の夜からはじまる。
“ジョナサン・ラーソン(アンドリュー・ガーフィールド)”、彼は他の成功者のように30歳までに成功したいと願っている。
誕生日まであと8日、一週間後の日曜日には30歳になってしまう。
故郷イギリス・ソーホーの西、夢の国・ニューヨークでなんとか夢を掴みたい!
彼が8年もの歳月をかけた“風刺”、“SFの要素”を取り入れた傑作ロック・ミュージカル、“スーパービア(Superbia)”
その重要な最後の一曲が書けず苦悩している。
時間が惜しい、惜しいが生活のため、ダイナーへ出勤しなければいけない。
寝る時間があれば曲を書いて…。
チック、チック、チクタク、チクタク…。
時間の浪費、爆弾の導火線のように“その時”が近づいてくる。
“時間は迫ってくる…時間よ止まれ、止まってくれ!”
時間だけが過ぎていく、今やっていることは時間の無駄かも知れない、時間が足りない。
私生活は荒れていくばかり、最愛の彼女との関係にもひびが。
8歳の頃からの親友で一緒に暮らしていた“マイケル(ロビン・デ・ヘスス)”、彼は役者の夢を諦めて就職、“イーストサイド”の高級マンションに住み、高級車に乗っている。
彼が夢を諦めて手にしたのは豊かな暮らし、安定した生活。
ジョナサンは誰もが直面することがある不安や焦り、その大嵐の真っ只中にいる。
慌ただしく何気ない暮らしのなかの出来事、出会い、そして別れ…その日常すべてにある“想い”を歌に、音に乗せ、曲を紡いでいくジョナサン。
みんな“なにかが違う”個性をもった魅力溢れるメンバーを集め、ジョナサンはついにスーパービア(Superbia)を完成させる。
業界人、友人たちを集めての試聴会。
この初披露の場でジョナサンはチャンスを掴む…はずだった。
前衛的すぎたのか、彼が8年費やした超大作は商業価値を見出されず失敗に終わる。
落ち込み、絶望する彼に光を当てたのは憧れの“スティーヴン・ソンドハイム(ブラッドリー・ウィットフォード)”
ジョナサンは“ウエスト・サイド物語”など数々の作品で著名な彼と学生時代、ミュージカルの作曲クラスで出会った。
彼の言葉で救われたジョナサンはまた、未来へと歩きはじめる。
スーパービア(Superbia)を追求すべきか…いや、新しい道を進むべきか?
そんななか“いい奴”、かけがえのない親友マイケルがHIVに感染したことを知る。
当時のアメリカでは近年のコロナのようにエイズが蔓延、ジョナサンたちが暮らすニューヨークでも猛威を振るっていた。
同性愛者はもっとも感染率が高い。
まだエイズが不治の病だった時代、感染、発症すれば死が訪れる。
“マイケルには時間がない、ボクはどうだ”
ジョナサンは“トニー賞”、“ピューリッツァー賞”を受賞した“RENT(レント)”を完成させる。
だが、1996年1月25日未明、ブロードウェイ・プレビュー公演初日に旅立つ。
“tick, tick... BOOM!”、彼の人生の導火線は突然燃え尽きたのだ。
“自由というなら教えてくれ。
なぜ多くの人が苦しむのか教えてくれ。
まだまだ多くの疑問を抱えたまま、彼は35歳で突然この世を去った”
第一幕はスーパービア(Superbia)を完成させるまでの苦悩を描き、第二幕はその失敗から成功の道を見つけるまでのジョナサンの“自分探し”を描く。
劇中の“Sunday”はジョナサンの恩師であり恩人、スティーヴン・ソンドハイムが作曲した“Sunday”をダイナーで働く人たちの日々に置き換えたもの。
ソンドハイムはジョナサンの才能を見出し、多くの業界人にジョナサンの推薦状を書いたとか。
ジョナサンのソンドハイムへの感謝と畏敬の念。
まさにオマージュだ。
ジョナサンは亡くなる前に体調不良を訴え、二つの病院で検査を受けている。
その誤診がジョナサンの突然の死を招いた。
人生とは、人の未来とは本当に分からないものだ。
思いがけず挫折し、成功し、思いがけず死が訪れる。
どうなるか分からない、分からないからこそ、目の前の人生を懸命に生きなければならない。
今やっていることは無駄かも知れない、それでもやらなければ。
本作撮影開始前に最愛の母を亡くしたアンドリュー・ガーフィールド。
それを思いこの映画を観ると涙が止まらない。
“しばらく普通の人になる”と休業中のアンドリュー・ガーフィールド。
彼がスクリーンに戻ってくる日を待ち遠しく思う!