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練武知真第35話 『虚実を知って前へ進むことを学ぶ為の武術』

『虚実分明(きょじつぶんめい)』。

形意拳や八卦掌で用いられる武術の重要な要領の一つです。

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これは、

『実』とは、「エネルギー」が入っている場所や状態。

『虚』とは、「エネルギー」が入っていない場所や状態。

便宜上「エネルギー」と記しましたが、

具体的には、「重心」「パワー」「気」「意識」「相手との関係性」など、武術に必要とされるあらゆる要素のことです。

武術においてはこの「虚実」への理解は必要不可欠なものであるということになります。

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では『分明』とは。

これは「明確に分ける」という意味です。

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つまり『虚実分明』とは、『虚実」を曖昧にせず、明確に分けよ』という教えなのです。

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では何故「虚実分明」でなければならないのか。

具体例を挙げてお話しましょう。

「移動」についての話が分かりやすいかと思います。

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人間が歩く。

これには次のようなステップがあります。

①前足を前へ出す。

②前足が着地する。

③体重を前足にシフトする。

④後ろ足を大地から離す。

⑤後ろ足を次の前足として前へ出す・・・以下繰り返し。

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人間が走る場合は上述の①~⑤がほぼ一瞬のものとして繰り返されるのです。

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武術の「歩法(フットワーク)」は、性質的に、この「走る」に似ています。

①重心を前へ移動させながら、前足を体幹より前へ出してゆく。

②前足が着地すると同時に、後ろ足を前足へ引き寄せ、次の前足として前へ出してゆく。

このようにして素早く移動してゆきます。

ただ武術の場合は、ただ「走る」のと異なり、戦う対象である相手がいますので、そこに安定性や臨機応変できる自由性、瞬時に技を使う為の攻防技術が含まれています。

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あくまで「移動」に話を絞ると、ここに重要な「虚実分明」の必要性がみられます。

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前進する為に足を前に踏み出す際には、

「前足が着地した瞬間、躊躇せずに全重心を前脚に乗せ、

同時に後ろ足を地から離して前脚へと引き寄せる」

必要があるのです。

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前足が着地した瞬間に、前足は「実」となり、

後ろ足は「虚」となって軽く素早く前脚に寄る。

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「形意拳(けいいけん)」の「跟歩(こんぽ)」と呼ばれる歩法、

「八卦掌(はっけしょう)」の歩法の要領である「平起平落(へいきへいらく)」はいずれも後ろ足の引き寄せ方を示しています。

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それは「後ろ足を平らな状態にして大地から一気に引き上げる感覚」こと。

爪先を後方に残したまま重心を前脚へ寄せるようなことはせず、

覚悟を決めたら、

すぐに踏み出した前足へ重心を移して一気に進む。

そのことが、機動力と勢いを生むのです。


安全確保をしつつ進むといのも場合によっては悪くはないのですが、

どっちつかずの状態というのは、武術でいうと最も不安定で危険な状態とも言えます。

進むのか、退くのか、その場にいるのか、それを明確にする事が活路を開くことに繋がります。

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「大地と繋がること」は形意拳や八卦掌の重要な要点ではありますが、そこには「良い繋がり」と「悪い繋がり」があります。

「良い繋がり」は、強い発勁を生み、根が映えたようの体の安定性を作ります。

「悪い繋がり」は、居着きを生じ、自由を奪います。

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では何故思い切って踏み出せないのか?

それは、不安や恐れが前へ進むのを躊躇させるからです。

心の状態が、体の動きに影響を及ぼすのです。

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それは何かにチャレンジする時でも同じかも知れません。

新しい一歩に100%の安全保障などない。

ならば・・・

それでもなお進もうとするのならば、

自分を信じて全身全霊で思いきって「進め」。


武術はそのことを強く教えてくれるのです。

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2024年10月16日 小幡 良祐

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