個を滅してただひたすら繋ぐ
「この授業がなくなったら本当に困ります、口コミを書いてくれと先生が頼むのであれば3000字どころか1万字でも書きます」
とミルクセーキを飲みながら生徒さんがおっしゃった。
彼女と神保町の専門書店に一緒に行って、喫茶店でお茶を飲んだ。
彼女はまた、「(私のクラスが)来年度も続くように初詣でお参りしてお願いする」と先日おっしゃった。大変にかわいい。
とまあ私がやっているクラスなのにまるで他人ごとのようだけども、私だってある日突然ミールが閉校すると聞いたあの時の絶望を思えば、私自身その気持ちはわかる。一応わたしも、(人生設計上途中で休んだりはするかもしれないけれども)今日の時点では一生やるつもりではいる。
別に私の教授法がすごいのではなくて、ミールがすごかったのである。そのときの教授法をただひたすらやっている。いいのか悪いのか、私はぼんやりした子だったのでロシア語をやっているといっても狂おしいほどロシア文学が好きとかロシアのクラシックが死ぬほど好きとかではないので、私自身なにか専門に特化することなく、ただひたすら発音と教科書に忠実に、ミールがそうであったような体力消耗型レッスンを毎週している。
彼女を専門書店にご案内して教科書を買って、そして喫茶店でお茶を飲んだ。ここは10年以上前に、恩師M先生が連れてきてくださった雰囲気のあるお店。
神保町にご案内したことそのものも大変感謝されたのだけれども、この神保町ツアーももとはといえば、私が大学生だったときに当時私の中国語の先生だったM先生が、休日返上で生徒たちを連れて案内してくださったのだ。
「自分が学生の時に私の中国語の先生が休日に神保町の中国語ロシア語の専門書店と喫茶店に連れて行って下さったから私もそうするのだ」
という話をしたら大学の先生でそこまでしてくださるなんてその先生は本当にすごい方なんですね、と彼女は仰った。
そうなのである。M先生にしていただいたことは思い返せばあまりに豊穣でとてもすべて再現できないのだけれども、せめてできることだけでも。