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無限のFLOWで出来た人間最終兵器FUNKY鬚HANKの大好きなバースについて語る①

最近ラップをよくdigるようになったので好きなラッパーが増えた。そこで知ったのがFUNKY鬚HANKだ。と言ってもまだ、それほど多くの彼の曲を聞いたわけではない。
知ったきっかけもネット上の無断転載のようなものだ。
はっきりいって良い聴き方とは言えないし、相応しくないかもしれないが、それでもどうしても感想が書きたくなった。だから書く。
今回僕が感想を書くのは無断転載の彼のおすすめバース集の中から特にくらって原曲も聴いてみてより好きになったものだ。


「TAKE IT TO THE HEAD (Remix) - 野崎りこん,daoko,FUNKY鬚HANK aka 花子」
から(該当シーンは3:00ぐらいから)

[FUNKY鬚HANK aka 花子]
思い出せる?また問い掛ける。
何時何分何秒前
地球が何回回ったときだっけ?
ねえ喉の奥込み上げる想いも、
すべてが送信した瞬間に
ことごとく文字化け。
たかが知れてるよ。
所詮1分33回転の渦の中ではさ。
100万再生よりたった100人に?…違う。
10万枚の売上げよりたった10人に?…違う。
毎日がヒューマンサイコスリラーだけど、
それでも僕は今もここにいるよ、
って1万回のダウンロードより
たった1人に、
知って欲しかっただけ。
だから意味なんかきっと、
多分、もうないよ。
煙になって、お空になったあの子の前では
こんなフローも、こんなリリックも、
なんの意味もないわけで。
あれ?なのになんで行くんだっけ?
決めたのっていつだっけ?

このバースである。
FUNKY髭HANKはまず「何か」があった瞬間を「誰か」に問いかけ、思い出そうとする。

「思い出せる?また問い掛ける。
何時何分何秒前 地球が何回回ったときだっけ?」

さらに
「ねえ喉の奥込み上げる想いも、
すべてが送信した瞬間にことごとく文字化け。」と続く。
これは彼の思いが、言葉にして送ろうとしても思ったように届かない、届けられないもどかしさを表現しているだろう。
先にネタバレすると僕の解釈では言葉が伝わらない相手は二者いて、その二者へ同時に言葉を送っていると思う。

(なにがすごいのか全然説明してないですが、もう少し先で回収するので我慢して読んでください!申し訳ないです)

さらに彼は
「たかが知れてるよ。所詮1分33回転の渦の中ではさ。」と続ける。
1分33回転の渦とは1分間に33回転するLP盤という種類のレコードのことであり、つまり彼は音楽を通して伝えられることなんかたかが知れてると言っているのだ。
こう考えると上で言っていた文字化けして伝わらない言葉、とは彼のリリックのことかもしれないと思えてくる。
彼のリリックはリスナーによって文字化けのように曲解されてしまう。
そのために彼の真意は伝わらない、だから音楽を通して伝えられることはたかが知れてる、と言うことだ。
つまり彼の言葉が伝わらない相手の一つは、彼のリスナーのことであり、世間の聴者のことである。

さらに言葉は続く。
「100万再生よりたった100人に?…違う。
10万枚の売上げよりたった10人に?…違う。
毎日がヒューマンサイコスリラーだけど、
それでも僕は今もここにいるよ、
って1万回のダウンロードより
たった1人に、
知って欲しかっただけ。
だから意味なんかきっと、
多分、もうないよ。」
これが2人目の彼の言葉が伝わらない相手である。
誰かはわからない。彼の友人か、彼の恋人か、全くわからないがきっと大事な人だろう。
世間で認められ、広く知られるよりその人1人に「ここに僕がいる」ことを伝えたいほどに大事な人なのだ。
では、なぜそれに「もう意味がない」のか?
それはこの先のリリックが示している。

「煙になって、お空になったあの子の前では
こんなフローも、こんなリリックも、
なんの意味もないわけで。」

そう。その大事な人はもう死んでいるのだ。焼かれて煙となり天高く昇った相手には、彼がどんな言葉を紡ぎどんな素晴らしいフローに乗せたとしてもそれが届くことはない。
だから意味がないのだ。
だから
「喉の奥込み上げる想いも、
すべてが送信した瞬間にことごとく文字化け。」なのだ。
彼の言葉はリスナーに届かないと同時に、最も届けたい人にも届かない。
そして
「あれ?なのになんで行くんだっけ?
決めたのっていつだっけ?」
として彼のバースは終わる。
彼はその人にだけ伝わればそれでいいと思っていた人を失って、なのに曲中でラップを続けている。それはなぜか?いつラップをやろうと決めたのか、その瞬間を思い出そうとする。

そう。最初の
「思い出せる?また問い掛ける。
何時何分何秒前 地球が何回回ったときだっけ?」
とは彼の初期衝動、ラップをやろうと思った瞬間のことだったのだ。
それを「問い掛ける」のは自分自身に対してと同時に、一番大事な「その人」にだろう。
だがその言葉は届かない。彼の言葉はインターネットを介して僕らの耳に届くばかりである。
彼はどうして自分がラップをしているのかわからないままに、しかしラップをやめられない。


バースの最初と最後が後から開示されていく情報のために二重に意味を持ち、円環的に繋がっていくこのバースは、ストーリー性とその構成の面白さ、そして彼特有の語彙に化け物じみたフローをもって超傑作となっていると思う。
これ最初聞いた時マジ泣きそうになった…



※根も葉もないことをいうと僕が今言った解釈はまさに彼がいう「文字化け」かもしれない。
彼は全くもって意図してないのに、僕の深読みによって彼の言葉は曲解されているかも知れず、だから感想を書くのは少し怖かった。
だからまあ僕はこう思うという程度の話としてご容赦願いたい。

ここまで駄文を読んでいただきありがとうございました。
まだ好きなバースはあるので書ける時に書きます!


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