作曲・編曲㊵
このテーマも随分久しぶりなので、本当に㊵でいいのかどうかも怪しいのですが、とりあえず聴いていて書きたくなった作品があるので、今日はこの記事について書いてみたいと思います。
JUJU with HITSUJIの「かわいそうだよね」です。
もちろん当たり前ですが、JUJUさんが羊をバックに歌っている訳ではありません。「HITSUJI」は吉田羊さんのことです。明記するのを避けたのか、マーケティング戦略なのかどちらかでしょう。歌は相当上手いと言っていいと思います。上手くJUJUさんが吉田羊さんを引き立てている、という要素もあるのでしょうが。
コード的に難しいものは使用していません。平井堅さんらしいメロの優れた作品だと思います。
編曲・プロデュースは亀田誠治さんです。ただコードはほぼ原曲のままでいじっている印象はあまりないです。これは平井堅さんのメロを活かすために敢えてこうしているのでしょう。
Aメロの冒頭のカノン進行は普通ですが、イントロ無しでこう来るとやはりインパクトありますよね。
でオケはシンプルにピアノのみ、全音符+装飾音で1コーラス目の最初のAメロが始まり、次のAメロのリフレインでピアノ4つ打ち+装飾音に変化します。
で短いBメロも同じパターンで来て、サビで盛るのかと思いきや、ベースが入るだけです。
これは勇気あるなあ、と思います。こんな地味な楽器を足すだけですから。しかもこういう場合であれば、ベースは高音部を使って歌うように弾くものですが、至って地味(笑)。
で、2コーラス目のAメロもピアノとベースだけです。ここら辺からベースが歌い始める、といった感じでしょうか。
で、もしかしてこのままいってしまうの、と思ったところで、Aメロの2回目からオルガンが入ります。
ここまで2つだけで来ただけなので、これが実に効果的なんですよね。うるっとくるような素晴らしい仕事をしています。
で、落ちサビ前の大サビ代わりの間奏でピアノとオルガンがユニゾン的に同じ旋律を奏でるんですよね。こういう盛り上げ方があるのかと考えると目から鱗です。
強調部に別の楽器でリエゾンを使う、という手法はもちろんあるのですが、この2つの楽器で同じ旋律を弾く、ということはなかなか思いつかないでしょう。
構造は全く違う楽器ですが、二つとも鍵盤を有する楽器であり、この2つをこのような使い方で使うことはあまり耳にしたことがありません。
で落ちサビのところはピアノのみ、そこから高音を弾くベース、という感じでパートを増やしていって、最後にオルガンが加わる、という、方法論としては基本的な形ですが、この編成でこれをやるからこそやはり強いインパクトがあります。で、最後はAメロの冒頭部で終わります。エンディングといったエンディングはありません。
この曲は相当計算された作品だと思います。普通二人で歌う場合、比較的早い時点でハモらせるのですが、基本1コーラス目からずっと交互に歌う形にして、2コーラス目のサビでやっとハモらせています。
吉田羊さんの歌に問題があるからハモリが少ない訳ではありません。前に今は無きぴったんこカンカンで二人がハモっているのを聴きましたが、やはり上手かったですから。
出来るだけシンプルなアレンジにして、メロを引き立たせつつ、かつ飽きさせないための工夫が随所に組まれていて、実に上手く計算された曲だと思います。
というか最初にこの編成を考えた時点で、「勝ち」でしょうね。編成を構成する楽器は少ないものの、鍵盤楽器を2つ使っているため、音数のメリハリもしっかりついているような印象です。
亀田誠治さんの編曲でも、この曲を超える編曲はないのでは、と思わせるような素晴らしい編曲だと感じさせる、見事な編曲だと思います。
でもそう言えば、この曲については前にも語ったことがあるような気もするんですよね。
まあ、多分切り口が違っているのでいいことにしましょう(笑)。