作曲・編曲④
一昨日からテーマにしている日本の「大量生産型分業システム」ですが、これが取られる背景にはもう一つ背景がある、と考えています。
「プロデューサー」のあり方の問題です。
欧米であれば、ほとんどの場合「プロデューサー」は一定以上の音楽的素養のある方が就く職業です。
もちろん素養と言っても色々あります。エンジニア出身のプロデューサーも結構多いですから。もちろん作曲者と兼業の場合が圧倒的に多いことは言うまでもありませんが。
ただ日本の場合、そうではないんですよ。ある時期から変わってきましたが、昔はそういうプロデューサーの比率は少なかったと思います。
音楽的素養がないのに何が出来るのか、と疑問を持たれる方も多いと思いますが、プロデューサーって結構やることが多いんですよ。
自分で作詞や作曲をやらないミュージシャンの場合、まず曲や詞を調達しないと作品は出来ません。
もちろんコンペなりで選ぶ場合もあれば、指名して書いてもらう場合もありますが、いずれにしてもそれがない限り作品は出来ません。
じゃあシンガーソングライターなら楽なの、というともちろんそういう訳でもありません。
当然ストックはある訳でその中からどの曲を選ぶのか、それが決まっていることだとしても、カップリングにどの曲をもってくるかとか、やることは沢山あります。
もちろん誰にその曲を編曲させるか、も考えなくてはいけません。
単曲のプロデュースであれば、基本音楽のことだけ考えていればいいので、やるべきことの数は減っていきます。
で、作曲も作詞も編曲も自己完結的にやる方であれば、単曲単位でのプロデューサーは必要ありませんから、こういう方のプロデュースは職業プロデューサーの管轄外と言っていいでしょう。
優秀なエンジニアさえいればセルフプロデュースで何の問題もありません。
ただ、何だかんだ言ってもそこまで出来る人はまだまだ少ない訳で、そうなるとやはりプロデューサーの存在が必要になるし、日本のような「分業制」で成り立っている部分がまだまだある環境下では、音楽的な素養がない方でもプロデューサーとして働くことが出来る訳です。
でそういう方がいる状況だと、やはりその中から有名な方も出てくる訳で、この方にプロデュースしてもらおう、というリクエストも増えるため、「大量生産型分業システム」が再生産される結果になる訳です。
もちろんご存知のように、こういう形態で制作される音楽は激減している訳ですが、その辺の事情はまた明日にでも。