作曲・編曲㉜
今日は事例研究の2曲目です。
今度は普通にポピュラーで、取り上げる曲はJUJUさんの「Distance」です。
もう何度も取り上げているので、目新しさはないような気もしますが(汗)。
やはりこの曲のポイントはイントロと落ちサビ、落ちサビ前の間奏にあると考えています。
構造としてはイントローAメロ(A-A’)ーBメロー(B-B’)ーサビー間奏ーAメロ(A-A’)ーBメロー(B-B’)ーサビー間奏ー落ちサビーラスサビーエンディング、といった構成です。
話が重なって申し訳ないのですが、ピアノにストリングスを加えるイントロは、バラードの定型的パターンであって珍しくはありません。
イントロ自体もサビの一部を変形して制作しているので、オーソドックスな手法です。
ベタっとストリングスを入れないところは上手いとは思いますが。
やはりポイントは後半で入る木管ですね。こういう発想って日本だとあまりないですし、洋楽でもすぐ思いつくのはChicagoの「Hard Habit To Break」位です。
特に日本の曲ってあまり木管を積極的に使わないですよね。使うとしてもサックス位で、サックスを除けば金管の出現頻度の方が高いと思います。
これって日本の特性なんですかねえ。派手な音の方が好きなのでしょうか。もしかすると吹奏楽の普及度の問題もあるかもしれませんね。金管の方が目立つし(笑)。
まあ余計な話は抜きにして、アレンジの続きを書きます(笑)。
まあAメロはオーソドックスにピアノで入り、Bメロでストリングスやチャイム系の音などが入り、後半でベースが入ってくるのは良くある展開です。
これも上手いのは間違いないですが、パターンとしては定型的なパターンです。
でサビの手前でドラムが入る、正にバラードの王道的なパターンです。
その後の間奏もサビの変形パターンですね。イントロで使っている木管を使って上手く2コーラス目のAメロにつなげています。
ただ上手いのは2コーラス目のAメロもピアノ、アコギときたら、普通ならストリングスを入れてくるところに木管を入れてくるんですよね。イントロのアレンジを上手く活用している印象です。でBメロでストリングスを戻して曲を安定させています。
サビへの入りは1コーラス目と同じパターンですね。ここをオーソドックスにしているのは、サビ以降の部分を活かすためでしょう。
で2コーラス目のサビが終わった後、大サビ代わりの間奏が始まるのですが、ここがこの曲、上手いんですよね。
ここは完全に独立した間奏になっています。
普通こういう曲でギターソロを入れる場合、ギターを最初から最後まで入れきってしまう、ということが多いんですよ。ある意味聴かせどころなので、目一杯入れてしまおうとしてしまいます。
ただこの曲の上手いところは前半はストリングス中心で組み立て、後半でギターソロを入れているところです。
ギターソロ自体はただ特徴のないフレーズ(にもなっていない位)なので、特に書く要素はありませんが、ギタリストを引き立てるための曲ではないので、これはこれで構わないでしょう。
でこうすることによって徐々に間奏を盛り上げていく、というのがポイントです。
そうすることによって落ちサビの効果が大きくなるんですよ。
やはり落差が激しい方が落ちサビの威力は強くなります。
で次の落ちサビが大きなポイントになります。ここって凡人だとボーカルとピアノ、とかこれまで使ってきた楽器をボーカルと一緒に使います。
ただこの曲の場合、いきなりハープが出てきてボーカルのバックで流れるんですよね。
ここの一瞬の静寂が美しい。
で、ハープの後に入ってくるのがエレクトリックギター。これもなかなか思いつかない発想ですね。
で徐々に盛り上げてラスサビに繋げていく流れがいいんですよね。
落ちサビで思いっきり落としているからこそのラスサビです。特に奇をてらったところはないのですが、落ちサビ故に曲が生きています。
で、美しいのが、簡潔かつ淡々としたエンディングです。
ここも他の部分からの借用ではなく、一つの独立した部分として制作しています。
この曲のアレンジの素晴らしいところはやはり、まずは落ちサビの落ち方ですが、もう一つ重要な要素は、イントロや1コーラス目後の間奏がサビから派生させて制作していて、オーソドックスな印象を与えておいて、後から独立した部分を出してくるところだと思います。
後にいけばいくほど予想外の展開になってくる、こういう作りはやはり上手いですね。
編曲者は坂本昌之さんという方で、やはり平原綾香さんの「Jupiter」でレコード大賞の編曲賞を取っています。で、独学らしいんですよね。
個人的には鬼束ちひろさんの「蛍」辺りも好きなアレンジですが、やはり「Distance」こそ、この方の最高傑作と言ってもいい、それほど素晴らしいアレンジだと思います。
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