曲と歌詞⑫
で「Fantôme」と言えば、この曲の詩も印象的ですね。
「真夏の通り雨」です。
この曲の詩はほとんど直接的な表現はありません。ほとんど比喩なり暗喩で構成されていると言っていいでしょう。
「二時間だけのバカンス」とは違っていて、明確に伝えたいことがある詩とは違うイメージです。
もちろんそれっぽい表現で詩を書くのはそれほど難しいことではないでしょう。それっぽい言葉を並べてみれば何となく出来ると思います。
ただこの詩が素晴らしいと思うのは
「尚も深く 降り止まぬ 真夏の通り雨」という所にあると感じています。
「通り雨」が「降り止まぬ」なんてことは実際にはありえないことです。なかなか「ありえない」ことを歌詞にするのは難しいんですよ。
でもこれこそが「詩」なんですよ。この部分が決定的にこの曲を単なる「歌詞」から「詩」に変えていると言っていいと思います。
やはり日常使っている言葉は、比較的「論理的」に出来ているから、こういう方法で心象を語るのは難しいと思います。
もちろん実際に降り止まないことなんてありえません。でもこれは「心象風景」なので、「あり」なんですよ。
「通り雨」が降り止まない、これは時が止まったかのように、悲しみが永遠に続くことを表現しているのかと思います。
でも、いつかは「降り止む」んですよ。時の流れの中で。
そこまで暗示している表現がこの「降り止まぬ 真夏の通り雨」というフレーズなのかと思います。
あまり同じ方の同じアルバムの作品について書き続けると、「アルバム批評」になってしまうので、これ以上は止めておきますが、「詩」という観点から考えても「Fantôme」はやはり日本を代表する名盤、と言っても過言ではないでしょう。
明日からは別の方を取り上げたいと思います。
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