ミュージシャン④宇多田ヒカル~16 「Keep Tryin'」
この曲はある意味「久々」感のある作品ですね。
色々と試行錯誤してまた「traveling」に戻ってきた、というような印象がありました。
もちろんコスプレという意味ではありません(笑)。
でもイメージだけで考えないで、実際に聴いてみると全然違う曲でした(汗)。
やはりMVの影響が強いのかもしれません(笑)。
コード進行は結構聴きとるのが厳しい曲です。ある程度解釈しないといけない部分が多くて、人によって違うように聴こえるかもしれません
まず主和音がほとんど使われていない、もしくは使われていないからです。で、コードを鳴らしている楽器のMIXが低いんですよね。ある意味「SAKURAドロップス」より進化しているようにも思えます。
基本系はⅥm7ーⅡm7ーⅤーⅢmですが、Ⅴがaugになる頻度が高いのが特徴的ですね。Ⅴをaugにするかしないかは主旋律との関係で決まっているのでしょう。augにすると綺麗な半音の流れが出来ますが、主旋律とぶつかりやすくなりやすい、という側面も持っていますから。主旋律がⅤの第5音だと使えない、という訳ではないけれど、使いにくい。
でもⅤでこれをやるという発想が面白いんですよ。というのも、Ⅴaugの次のコードはⅢmの第一展開形(Ⅲm/Ⅴ)となり、その後にⅢmに進むんですよね。このⅢmの第一転回形は機能としてはドミナントであるため、限りなくⅤに近い和声なり、独特のコードの流れになります。
上手い経過的コードの使い方ですね。
あと、主旋律の作り方も上手いんですよ。割とこの頃の宇多田ヒカルさんって音を詰め込む印象があるのですが、その中に伸びる音を上手く組み入れていて、そこが実に効果的です。しかもそこがⅤaugの部分と一致しているのでなおさら効果的です。
アレンジもまた上手いですね。
「traveling」がどちらかと言えば従来のサウンドを踏襲していたのに対し、「Keep Tryin'」はサウンド自体がより自由になった印象です。
ある意味これまでの試行錯誤の結果なのかもしれません。
「traveling」以前はどちらかというと、「宇多田ヒカルのサウンド」というものがあって、あくまでもその枠内で作っていたと感じています。
もちろん「traveling」のサウンドはデビュー当初とは違うものにはなっていますが、やはり「枠内」のイメージなんですよね。
それが試行錯誤の中で消えていったように感じます。
もちろん「Keep Tryin'」の中に「traveling」のサウンドイメージは確実にあります。
ただ、それだけではない要素もこの曲にはあり、だからこそ「traveling」とは違う曲になったように感じています。
まずパッド系の音が明らかに増えてますよね。「SAKURAドロップス」辺りもそうなのですが、この曲をまとめているのはこの手の音だと思います。
特にイントロでの使い方は印象的ですね。変わったぞ感満載でこれも効果的です。
何だかこの曲も聴けば聴くほどはまりますね。
基本聴きながら書いているので、文字数が長い=聴いている回数も多い、ということなんですよ(笑)。