作曲・編曲103
これまで触れることが極めて多かったと思いますが、実際に語ってみることが少なかった、この曲のコード進行について書いていきたいと思います。
「Just The Two Of Us」です。
まあ一昨日「夜に駆ける」について書いていて思い立っただけなのですが(笑)。
「Just The Two Of Us進行」と言われてますよね。それ位有名なコード進行を持った曲です。
日本ではよく「丸サ進行」と呼ばれますが、こちらが本家です。というより後述しますが、別のコード進行言ってもよいでしょう。時代的にも遥か前に作られた曲です。1980年の作品ですから。
冒頭でも触れましたが、最近ではYOASOBIが多様していることで知られていますよね。
その割に間違った解釈が多い。
原曲の基本形はⅣ△7ーⅢーⅥmーⅤmーⅠ7と来て、元に戻るパターンです(ⅥmとⅤmの間に経過和音を入れて半音進行となっている部分もあります)。
でもこれでⅤmを省いてかまわないという方、多いんですよね。
実際にはにこれが「丸サ進行」と呼んでもいいかもしれません。あの曲の場合、このコードは使われていないですから。
挙句の果てにポイントはⅢだ、という訳の分からない議論まであります。
この和音だけなら単に平行調のドミナントの借用というだけの話で、いくらでも使われていますし、このコード進行の特徴とは到底言えません。
まあ実際にそういう曲も含めてJust The Two Of Us進行と呼ばれていますが。
ただ、このⅤm、実際には重要な和音なんですよ。
Ⅴmを単なる同主調からの借用と見做している方も多いですが、これ、見たらすぐ分かる話じゃないですか。
その後のⅠ7、その後に戻るⅣ△と合わせると、Ⅳ△がトニックのように見える、ⅡmーⅤ7ーⅠ△になっています。
この流れを作るためにⅤmにしている、としないと片手落ちです(もちろんⅤでも成立はしますが、ダイアトニックコードになる分効果は弱まります)。
もちろん和声的には根音が最も重要な音ですから、Ⅱがメジャーコードでも問題はありません。
ただ実際には、YOASOBIの曲で、この曲の調性を間違えて考えている方も多かった位、勘違いさせやすい進行です。
流石にここまで有名になると、そういう方もいないとは思いますが、以前も触れたように、確かに最初の和音をⅠ△にしても説明は可能なんですよ。
暇なら(こら!)最初のコードをⅠ△としてでコード進行を組み立ててみてください。分かるはずです。
そういった調性の不安定さにこそ、このコード進行の特徴があります。
言ってみれば「丸サ進行」はそれほど斬新ではないのに対し、「Just The Two Of Us進行」は実に凝った革新的なコード進行と言っていいでしょう。
これって難しい話じゃないんですよ。ただ単に気付くか気付かないだけの話。
そのことを理解しないと、何だか分からないでしょ、この曲のコード進行。
なんで「Just The Two Of Us進行」=「丸サ進行」になるのかが分からない。
一つのコードを省いた分、「Just The Two Of Us進行」の肝の部分が失われているんですよ。