日本の作曲家②

80年代は大量生産型の作品が多いなどと、記事もろくに読まずにコメントを入れる方がいらっしゃるので、次は敢えて80年代の作曲家を選びます。

ほぼほぼ80年代の曲が有名、というより他の年代の曲は竹内まりやさんへの提供曲以外知らない作曲家、林哲司さんです。

いわゆる「CITY POP」の立役者と言ってもいいでしょう。

竹内まりやさんの「September」や「象牙海岸」、杏里さんの「悲しみがとまらない」、杉山清貴&オメガトライブの「SUMMER SUSPICION」、中森明菜さんの「北ウィング」、ちょっと毛並みの変わったところだと、上田正樹さんの「悲しい色やね」や、今から見ると正に「あの頃」の旬の作曲家だったと思います。紛れもなく。

過去形で書いてすみません...。

ただ筒美京平さんのような方は例外で、「職業作曲家」だとやはり数をこなす分、寿命が短いのは紛れもない事実です。

その点、シンガーソングライターの方が長持ちしますよね。

同じ軸で評価するのは少し違うのかなあと。

もちろんこの方だけが「CITY POP」を作っていた訳ではありませんが、多分「September」が無ければ、筒美京平さんも「ドラマティック・レイン」書いていなかったんじゃないかな。

「新しい音楽」の時代が来たから、やはり作品を変えていったんだと思います。さすがにリズム志向の強くなった90年代後半の流れには乗れませんでしたが。

もちろんもはや確認するすべはありませんが...。

「September」、今聴くとアレンジ的には突っ込みどころ満載です。まず大袈裟なブラスに古臭いギターとフルートのイントロが今では完璧にあり得ないパターンです。Aメロのギターのカッティグもえ?、って感じ、妙にリズムを強調したベースもベースだし、やたらと音の高いストリング系の微妙な音はもはや意味不明、サビの前のブラスも今ではありえません。極めつけは最後の方出てくる「シュビドゥビドゥビドゥビドゥバッパ」という謎のコーラス。曲が良いから聴けるだけで、曲が悪かったら笑いが止まらないほど時代がかったアレンジです。

ただ曲自体はいいんですよね。前にも書いた通り、曲の構造は完全に洋楽ですから。

詩もいいんですよね。風景が目に浮かんできます。何故突然「トリコロールの海辺の服」が出てくるのは意味不明ですが、松本隆さんなのでしょうがありません。この方はこれが持ち味ですから(笑)。

「夏」の終わりを予感させるために「海辺」を使うのは分かりますが、何故「トリコロール」なのかは意味不明です...。

多分この方の当時の作品、アレンジし直せば今でも全然古くないと思います。

特に好きな曲は「象牙海岸」ですね。アレンジはベタに古いけど、「September」の後に聴くと割と聴けます(笑)。

この曲も独特の構成の曲ですよね。自分はBメロのない曲、と認識していますが、自分がサビだと思っている部分がBメロで、Cメロと思っている部分がサビと思っている方もいるかもしれません。

自分がCメロと思っている部分の次に2コーラス目のAメロがきますから。

ただやはりCメロと思っている部分の転調と、後半の浮遊感のあるコード進行からすると、ここがCメロでほぼ間違いないと思います。

一般的にはサビの後半で浮遊感のあるコード進行は使わないですからね。完全な転調ならともかく、浮遊感のある進行をサビで使うとどうしてもサビが弱くなりやすくなります。

どちらかというと、このタイプのコード進行はBメロで使って浮遊感を持たせて転調の前段階的に使い、サビで完全に転調する、というパターンが多いと思います。

例えばMISIAさんの「忘れない日々」のBメロのような使われ方が一般的だと思います。

もしくはCメロが1回だけ出てきて、その後のサビでの転調をスムーズにしてあげたりとか、そういう使われ方が多いですよね。「September」はそんな感じのCメロです。BメロがないのにCメロと呼ぶのは不思議な感じもしますが(笑)。

ただこの曲が面白いのは、1コーラス目の後にCメロが来て、そこで転調して、後半は浮遊感のあるコード進行に移行した後、元の調性に戻って2コーラス目のAメロに行くところですね。

で2コーラス目のAメロ(ボーカル抜き)ーサビーCメロと来ると、人間って3コーラス目も同じパターンになる、と思うんですよね。ところが実際には3コーラス目で半音上げ転調するから、ありがちな半音上げ転調とは違った印象を与えます。

いわゆるありがちな半音上げ転調より効果が出てくるんですよね。

この曲、シングルカットはされていないのですが、初期の竹内まりやさんの代表作でもあり、林哲司さんにとっても代表作の一番でしょう。

多分聴いたことのない方が多いと思いますので、是非一度聴いてみてください。

アレンジはベタに思いっきり「古い」ので、ライブバージョンの方がいいかもです。

ただ歌自体はオリジナル版の方がいいんですよね...。


ほぼ書きたいことを書いていて、読んでいただけることも期待していませんが、もし波長が合えばサポートいただけると嬉しいです!。