ミュージシャン④宇多田ヒカル~26 「桜流し」
ようやくここまで来ました(笑)。
この曲、本当に名曲ですね、って月並みなことしか言えないのか、って言われそうなので、名曲というのは本心ですが、ちゃんと書きます(汗)。
コード進行的には宇多田ヒカルさんらしいというか、機能性よりもイメージを重視して制作しているようなイメージです。
ただこの曲を名曲たらしめているのは別の所に理由があると考えています。
それはダイナミクスの大きさです。
イントロなんて本当に小さい音だから、ここに合わせてボリューム上げると、ヘッドフォンだと後半で耳を確実にやられます。
スピーカーで聴くように制作されているように感じます。
ただ現実の世の中って、音楽はヘッドフォンで聴くものになってきているので、そういう意味ではこの作品、結構冒険作なんですよ。
ただ実際の音楽って本当はそういうものであって、例えばマキシマイザー使って音圧を上げること、かなり頻繁に行われますが、そんな音は世の中に実在しません。
曲の部分部分で音の大きさが違うのが本来の自然な音であり、演奏です。
そういう意味では「桜流し」は音が小さい部分、大きい部分がはっきりと分かれていますよね。
これが本来の音楽の姿です。
で、それ以上にこのことには意味があります。そのことがこの作品の「壮大さ」に繋がっているからです。
意図を持って、ここはパート数を少なくする、ここは多くする、ということを変に音圧を変えないでやっているから、メリハリのある作品になっている、ということです。
静かな部分、盛り上げる部分があるからこそ、壮大な作品になっているんですよ。
これが最初から大きな音だとこうはならないんですよ。ただ音の大きな作品にしかならない(笑)。
実際には尺は短いのに、尺を長く感じさせるのはその辺も大きいと思います。
もちろんそれだけではなくて、曲の構成の巧みさもあるのですが。
そういう意味ではこの曲、これからの音楽作品の「一つの形」を示しているように感じられます。
最近なかなかこういう「壮大さ」を感じさせる曲は少ないですから。