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エッセイ

日常の中で、ふ、と心の中のアルバムが開くときがある。

頂き物のみかんを何となく食べていると、昔母方の実家で、お仏壇にそなえられていた大きな晩柑を思い出した。

私の実家からは車で30分の距離で、連休がある度によく行った。晩柑は皮が分厚くて硬いし、中の薄皮も分厚くて食べにくいからあんまり好きじゃなかったけれど、退屈をしのぐために食べる。幼い頃はおじいちゃんが剥いて食べさせてくれた。大きくなってからは自分で剥けるんだけど、おじいちゃんが剥いては『食べ』と私にくれていた。

いつ行ってもお仏壇には果物と仏花がお供えされていて、毎回よくわからないままお線香をあげて「なむなむ」と言って手を合わせた。今は祖父が入っているのでいつも「おじいちゃん遊びにきたで〜」と言って軽く近況を報告する。

祖母は現在施設にお世話になっているので、あの家もお仏壇も、どこかひっそりとしている。

30歳で暇になると、子どもの頃を思い出して寂しくなるから良くないね。

今度、おじーちゃん家に晩柑をもっていこう。


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