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実体験の印象にパズル的操作を加えて音楽に 自分らしさは無意識のうちに表現されるもの 森田真奈美さん〈後編〉
12/28放送は、番組のテーマソング含む様々な曲を作曲、演奏なさっているジャズピアニスト、森田真奈美さんの後編でした。森田さんは「放課後NPOアフタースクール」のアドバイザーを務めるなど、音楽を通してソーシャルデザインに関わる活動にも取り組まれています。新発売のアルバムに収録されている「愛の讃歌」の生演奏によって、2024年最後の放送を締めくくっていただきました。
実体験の印象にパズル的操作を加えて作曲
今まで番組のテーマ曲、CM、ゲームなど色々な曲を手掛けてきました。ジャンルはあまり意識せずに様々な曲にチャレンジしているのですが、私のジャズ感を出してほしいとご依頼いただくお仕事が多いので、ジャズ寄りの作品が多くなっているかなと思います。
曲の作り方について、想像で作品を構想できる友達もいるのですが、私は実体験からしか音楽を作れなくて。自分が体験したことをもとに、その印象を音楽にしようとします。ただ、自分が得意としている書き方になってしまわないように、書いた後に少し、数学的というかパズル的操作をして印象を変えたりしています。曲の中の一部と一部をくっつけたり、調を変えて半音上げたりしています。
音楽に対する姿勢の変化
昔は若かったこともあり、音楽で自分や何かを表現しなきゃいけないという意識がすごく高かったです。でも最近は、「別に表現しようとしなくても、もう自分なのかな」という感覚になっているので、例えばどこに行ってどのバンドと一緒に弾いても、メインのミュージシャンの方がいらっしゃったとしても、出演者の邪魔をしない程度に、自分の音楽性を意識しなくても出せるようになりました。
20代、30代の頃は自己表現の部分をもっと頑張っていたと思うのですが、最近やっとこの境地にたどり着きました。それもまた今後変化するとは思いますが。ここからは少し落ち着いて取り組みつつ、また年を重ねるごとに色々頑張りたいなと思います。
音楽の多様化について感じること
近年は、SNSで発信したり、動画サイトを使ったり、皆さんが色々な形で作品を発表されています。発信の仕方や音楽に対する考えが多様化しているので、作品の発表のしやすさはあると思いますね。
同時に、昔に立ち戻っているなという印象もあります。アナログのレコードは言わずもがなですが、最近はカセットテープを使っている人の話も聞きますし、若い人も含め、昔に立ち返っている人がやっぱり多いなと感じます。
音楽活動から広がる世界
音楽活動の傍ら、放課後 NPOアフタースクールにもアドバイザーとして関わっています。「子どもたちの放課後を黄金の時間に」という思いのもと、市民先生と呼ばれる人たちが子どもたちの放課後を応援するこの活動に参加したのは、NPOのメンバーの方がつないでくださったことがきっかけです。昔レコード店の店員さんをやられていた方で、当時私が出した1枚目のアルバムをすごく気に入ってくださったんです。その方がお店を離れ、放課後NPOアフタースクールに参加された時におそらく、代表の平岩さんに進言してくださって、私も関わることになりました。
そこで中村先生ともお知り合いになって、この番組のオープニング曲を作ってほしいと依頼をいただき、快諾しました。そうして生まれたのが「Incomplete Works」です。
この曲も収録しているソロピアノアルバム「HANDS ON」を 11月に出させていただいたので、年が明けてから2月と3月にリリースツアーを開催します。久しぶりにお邪魔する地方もあり、色々なところで皆様にお会いできたらなと思っております。
中村陽一からみた〈ソーシャルデザインのポイント〉
テーマ曲のタイトル 「Incomplete Works」から、まだ完成はしていないけれども、歩みを進め、創り上げていくようなイメージがすごく伝わってきた。あらためて今更ながら、人と人、人と地域など様々な関係性を編み直し、活かすことを意味するソーシャルデザインにふさわしいタイトルだと感じた。
アルバムジャケットのカッコいい写真の表情にも、これからに向けての意志が表れている感じがした。
リスナーからのメール
「中村先生、残間さんおはようございます。いつも楽しく番組を拝聴しています。
最近は多様性や環境に心配りをする時代になり、昔と比べて社会が良い方向に向かっていると感じることもありますが、一方で震災や貧困が多くなっているような現実もあります。中村先生から見て、2024年はどんな1年でしたか?」
2024年は元日から能登半島地震が起こり、いまだにその余波が続いています。世界を見ても、紛争が続いたり、政治的に大きな出来事が起こった激動の1年であったと言えるのではないでしょうか。
日本においても、人口減少、少子超高齢社会等、あまり明るい話がないのが正直なところです。しかし、番組でゲストに来てくださる方とお話ししていると、個々の動きの中では、新しい世代の方も含めて世の中を自分の身近なところから変えようとする動きが出ていると思います。ここから新しい希望を見出していきたいですね。