#135 パトリック退場の件に関しての雑感をば。
先日のガンバ大阪vs鹿島アントラーズのパトリック退場の件に関して、こちらで少し雑感をば。
内容は下記のリンク先(私のはてなブログ)で更新したこちらの記事と一部重複しています。
一番妥当な判定は両者にイエローだった…というのは前提として、最終的に鈴木が不問になったのは仕方ないと思うんです。
というのも、VARは過剰介入を防ぐ為に、その介入の対象をゴール、退場、PKの是非、もしくはカードの人間違いの4点に限定されています。要は、一度ノーファウルと判定したプレーに対しては、それがレッドカード相当かペナルティエリアでのプレーでない限りはVARを介入させる事は出来ない訳で、鈴木のプレーは少なくともレッドカードに値するプレーではなく、カードが出たとしても最大でイエローというプレーであった以上、結果として鈴木がお咎めなしになった事はVARの運用としては正しいと思っています。逆に鈴木にVARの結果でイエローカードを提示すれば、それはVARの過剰介入という事になって、それはそれで別の問題が発生する訳で。最初の時点で鈴木にイエローが一番正しい判定だったとは思いますが、それが出来なかった以上、鈴木のファウルに対するVARの扱いは仕方ないと言わざるを得ないのかなと。
なので今回のジャッジで問題になるのは鈴木どうこうというよりは、やっぱりパトリックの退場が正しいかどうか…に集約されてくるんですね。
角度もそうですが、あのプレーを見るとあのシーンがどういう流れで起こったか…という順序はまずわかると思うんです。パトリックの例の動きがあったその時点で鈴木は不可抗力では無い形でパトリックの膝をガッチリ掴んでいたのは明白になる訳で、その上であれが報復行為と言えるだろうか…と。パトリックの場合はレッドか否かという場面な訳ですから、鈴木のファウルとは違ってVARを介入させられる対象になってくるし、一連の流れの中に物理的な原因として鈴木の行為はある訳で、少なくともパトリックのレッドはイエローに減刑されるべき場面だったんじゃないかと。
鹿島サポの言う「じゃあパトリックの関川郁万への行為はどうなるのか」という前半30分の場面に関しては、実際にパトリックが主審に注意されていたのは確かですし、あのプレーに関してはファウルやイエローを取られてもおかしくはない場面だったとは思います。あれはあれでパトリックは気をつけるべきなのは確かですが、あの場面で関川の落ち度は一切無い事は前提としても事故的な側面の方が大きく、鈴木との交錯と比較するには性質があまりにも違い過ぎます。よくある事とまで言うとさすがに関川に酷ですし、さすがにそこまでは言うつもりはありませんが…少なくともプレーの中で起こり得る現象ではあったと思いますし、敢えて鈴木との交錯と比較するなら、鈴木の場合は流れとしては起こり得ないプレーだったのが違いでしょうか。パトリックの肘打ちで脳震盪を起こしたように書いている人もいますが関川が脳震盪を起こしたのは正確には着地の時ですし、パトリックが関川を倒したのは確かとはいえ、それが退場相当のプレーとは言えなかったから不問になった訳で…(もちろん関川に関してはすごく心配ですが…)。
確かにそれが主審のパトリックに対する心証に影響した部分は確かだと思うし、人間である以上はそれは自然な流れだと思うんですよ。ただ、VARの導入ってそういう「心証でのジャッジ」であったり「二つのプレーを合わせてレッドカード」みたいな絶対性のない基準を排除する為に設けられたシステムでもある訳で。そういう意味では、もし関川とのプレーと2つ合わせて退場…という理屈なのであれば、それも納得はいかない部分になってくるんですよね。
パトリックの出場停止が撤回され無かった事は現行制度としては仕方ないと思うんですよ。不条理さは感じていますけどね…。逆に鈴木優磨に出場停止を科せ、とも思わないし。先日の富士フイルム杯の大島僚太のプレーにしてもそうですが、カード対象の人違いや、いつぞやのレアンドロみたく露骨かつ無関係な暴力行為以外で遡及的に処分を科す・取り消す事は今のJリーグでの規約としては出来ないし、例外的にそれを認め始めると審判の地位が無力化しかねないところもあるでしょうし。
ただ、だけど…むしろだからこそ、VARというシステムは見えない部分、見えないシーンを補完する役割を担える訳で、VARの力も借りながらやる事は審判を守ることにも繋がるシステムな訳です。特にレッドカードというのは、選手の行った行為に対してプレーする権利を剥奪するという懲罰システムだからこそ、ある意味ではPK以上に慎重になるべきだとも思いますし、今回の件に対する素直な感想としては「こういう時の為のVARじゃないのか…」って。結局、鹿島側以外の全ての関係者にとって不幸な結末になってしまったし、世間からのバッシングも勘案すれば、ある意味では主審や鈴木、ストレス面では鹿島ファンにとっても不幸な結末になってしまった訳で……。