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Photo by
sinoayakouri
自己認識の始まりの思い出
自分は今、30代。
実家を出て、配偶者と子供と暮らしている。
一人で外出して歩いている時、たまにふと思うこと。
もしかして、自分が30代なのも、配偶者がいて子供がいるのも、長い夢か自分の空想の産物なんじゃないのか?本当に、本当に、実在するのかな?ってこと。
この感覚、昔から形を変えて、時々ある。
初めてそれに気付いた時のこと、よく覚えている。
自分は2歳で、幼稚園に入る前の年のことだった。
晴れている平日の午前のことだった。
ドレッサーの鏡に映る自分と、不意に目が合った。
自分の琥珀色の瞳を、吸い込まれるように暫くじーっと見つめた。
見飽きたら、変な気持ちがして、ソファーに寝転んで、今度は白い天井をじーっと見つめた。
「自分はいる、ここにいる、ここにいる。
目をつぶったら全部無くなるかな、怖いな。」
おそるおそる目をゆっくり閉じて、開けた。
目を開けたら、やっぱりいつもの天井があった。
自分の意識は天井へ吸い込まれていきそうで、体はソファーのやわらかさに溶けていきそうだった。
ゆっくり体を起こし、さっきみたいに鏡の方を向いたら、さっきと同じ自分の顔が映った。
「やっぱり、自分はここにいた。」
生まれて初めて、自分の存在そのものについて、なけなしの語彙で思考した瞬間だった。
それより前後の細かいことは全て忘れてしまったが、自分や世界についての思考の始まりは、確実にここにあるような気がして、忘れられない。