17歳のカルテ (映画 ジェームズ・マンゴールド ウィノナ・ライダー アンジェリーナ・ジョリー)
※自傷・自殺に関わる内容が含まれます。
スザンナ・ケイセンのノンフィクション自伝が原作、主演ウィノナ・ライダーが原作を気に入り、製作総指揮をとって映画化された。
原作者も主演も境界性パーソナリティ障害の経験者であり、心理描写のリアリティに溢れる作品。
(ネタバレを避けたあらすじ)
舞台は1960年代アメリカ。
18歳のスザンナは、突然ウォッカ1瓶とアスピリン1瓶(鎮痛剤)を一気飲みして救急搬送された。
スザンナは病識が無く、自殺する気も無かったが、何かに苛立ちや不安を覚えていた。
エリートな家族、元恋人、将来の夢…様々な葛藤がスザンナの心を支配していた。
後に、境界性パーソナリティ障害の診断を受ける。
両親の勧めで精神病院に入院することになったスザンナは、他の患者達に出会って打ち解けていく。
精神病を誇るかのような病棟のボス的存在リサ、鶏肉と下剤しか口にしないデイジー、虚言癖のあるジョージーナ、顔に火傷跡のあるポリー…
病棟の少女達もまた、それぞれの葛藤を抱えていた。
スザンナは入院期間を重ねるうちに病棟の生活に慣れていき、自分の居場所は精神病棟なのではないかと思い始めるが…
【感想】
自分自身が現在うつ病だから思うのだろうが、精神を病んだ細かい心理描写が生々しかった。
スザンナ役のウィノナ・ライダー自身が境界性パーソナリティ障害で入院を経験していたり、リサ役のアンジェリーナ・ジョリー自身が10代から鬱状態だったりした背景があり、本当に病んだ経験を演技にぶつけているように感じた。
17歳のカルテという邦題は、公開年の2000年に17歳の少年事件が頻発したことで付けられた。
スザンナの年齢は、入院手続のシーンによると18歳で合っている。
原題Girl, Interruptedは直訳すると、中断された少女。
精神上の事由で休んだりドロップアウトしたりした経験がある人は、その「中断」に対して思うところがあるかもしれない。
もしくは、そのような経験が無ければ、学校や仕事等を急にちょっと長く休んだ後に行きづらい気持ちを、とてつもなく大きくずっしりさせたようなものを想像してほしい。
精神病で社会と自分との分断を感じたら、居場所が分からなくなり、戻るのが怖くなる。
そのうち、病気である状態そのものがアイデンティティかもしれないと思いそうになるが、そうなってしまうと途端に停滞していく。
精神病院の待合室を見回して、「ここにいる患者全員心が病んでる」って安心する気持ちと、この気持ちに安住して進めないまま生き続けたくない気持ちの、二律背反。
自分の弱さに目を背けて一生閉じこもるか、それとも弱さを受け入れて進んでいくのか。
自分の気持ちは、自分で言葉にしないと分からない。