SOLITUDE DARKNESS FANTASY 53

森の奥深く、さらに進むと朽ち果てた廃墟が姿を現した。灰色の石造りの建物は、時の流れに取り残されたかのように静まり返っていた。所々にひび割れがあり、蔦が壁面を覆い、屋根の一部は崩れ落ちている。廃墟からは、かすかな風の音が漏れ、どこか悲しげな雰囲気が漂っていた。

パトルは廃墟の前で足を止め、目の前の光景をじっと見つめた。「これは一体……」彼は小声で呟きながら、ゆっくりと中へ足を踏み入れた。扉はすでに朽ち果てていたが、開いた空間からはかつての生活の名残が見え隠れしている。石でできた台所や、古びた木製のテーブル、そして壁には不思議な模様が彫り込まれていた。

彼が奥に進むと、一際目を引く部屋があった。中央には円形の祭壇があり、その上には奇妙な石碑が立っている。石碑には複雑な文字が刻まれており、その意味を解読するのは困難だったが、パトルはその表面をじっくりと観察した。ふと、文字の一部がぼんやりと光り始めた。

「何か……反応しているのか?」

彼は手を石碑に近づけた。触れると冷たい感触が伝わり、瞬間的に光が強まった。彼の頭の中に何かが流れ込んでくるような感覚があり、思わず顔をしかめる。その光景は一瞬にして広がり、彼を不思議な幻影の中に引き込んだ。

廃墟の外観が消え、目の前に広がったのはかつてのこの場所の姿だった。人々が生活し、賑やかに行き交う様子が鮮やかに映し出されていた。しかし、それも束の間のことだった。急に暗雲が立ち込め、人々は何かから逃げるようにして廃墟を去っていく。その後にはただ、廃れた街並みが残るだけだった。

「ここで一体何があったんだ……?」

パトルは幻影から目を覚まし、再び静まり返った廃墟に戻ってきた。石碑の光は消えており、部屋は元の暗さに戻っている。彼はもう一度周囲を見渡し、奥の部屋に続く階段を見つけた。

階段を下りていくと、地下へと続く長い通路が現れた。薄暗い通路の先には、かすかな光が漏れている部屋が見える。パトルは足音を忍ばせてその先へ進んでいった。部屋の中には古い書物が積まれた棚があり、中央には一冊の本が浮かんでいるように見えた。

「これは……魔法の本か?」

本には不思議な模様が浮き上がっており、パトルが手を伸ばそうとした瞬間、突然本が激しく光り始めた。光は眩しく、彼の視界を一瞬にして奪った。目を開けた時、再び廃墟の外に立っていた。

「どういうことだ……?」パトルは廃墟を振り返ったが、まるで何事もなかったかのように、そこにはただ朽ち果てた建物が静かに佇んでいるだけだった。謎めいた廃墟の秘密に触れたものの、その意味はまだ解けぬままだ。パトルは再び森の中へと歩みを進めたが、背後の廃墟がただならぬ力を持っていることは明白だった。彼の心には、新たな疑念が生まれていた。

いいなと思ったら応援しよう!