何者

何者にもなれなかった夜。

誰かが何者かにしてくれるんじゃないかと彷徨っていた。

水と泡の中で溺れている。自分の息で視界が見えなくなる。

そのまま底に沈んだらきっと誰にも見つけてもらえないんだろうな。

3年前、誰かに見つけてもらいたくてこの街に出てきた。

憧れの人を胸に抱いた10代の私。

そうだ。好きな音楽を聴くと、あの頃に戻れる。

あ、やっぱりまだ頑張れる。守ってくれる人も誰もいないけど。

人気のない街に一人踏み出してみる。磨かれてないままの輝きを見せつけるために。誰か、見てろよ。

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