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【人怖話】勇気ある女性客の話
ネットのニュースでいじめを苦に自〇をされた女子中学生の記事を読んで内心色々と思うところがあった。
実は私も学生時代にいじめに遭ったことがあるのだが、その内容を思い出したのもあるし、女子中学生に嫌がらせをした同級生にも腹が立つし、そもそも周囲の傍観者は一体何してたんだって言いたい。
表立って助けるのが難しくても、例えば「自分が言ったことは内緒にしておいて欲しい」とお願いして担任の先生や他の先生にそれとなく教えることも出来るだろうし、今の時代は学校のホームページにメールアドレスなどの連絡先が記載されている。
そこにフリーメールを利用して匿名で訴えることも可能といえば可能だ。
昔と比べると便利な世の中になったのだから、簡単に情報を手に入れることが出来るし、他人に発信することも出来る。
それを活用しないのはいかがなものかと思うのだが、それを悪用されないかの懸念はある。
ネットやメールソフトを正しく使える人ばかりではないのが悲しいところだ。
というわけで、今回は便利なツールを正しく使った人の話をしたい。
コンビニに勤めていた時の話になるのだが、こんな出来事があった。
ある日、中年女性のお客様が眉間に皺を寄せてレジまでやってきた。
私は嫌な予感がした。
何か文句を言いたそうな表情だったからだ。
その女性のお客様に「どうされましたか?」と尋ねてみる。
女性「さっきから雑誌売場にマナーの悪い子供達がいるのよ、アイスを食べながら漫画雑誌を立ち読みしてるの!」
私「そういえばアイスは先ほど購入されましたが、そのまま帰宅したものだと思ってました」
女性「全然帰宅してないわよ、何人かのうちの1人がアイスを食べながら読んでるもんだから、雑誌が汚れないか冷や冷やものなんだけど!」
私「ご報告ありがとうございます、一度注意してみます」
そう答えると、即座に雑誌コーナーに足を運んでみるが、本当に小学生数名が立ち読みをしていた。
その中のひとりが先ほど購入したアイスキャンディーを食べながら漫画を読んでいるではないか!
私「君、さっきアイス買ってくれたのはいいんだけど、食べながら漫画読むの辞めてもらえるかな」
子供「・・・・・」
私「目撃した他のお客様から苦情が来たんだよ」
子供「・・・・・」
私「アイス食べながら漫画読むと汚れる可能性が高いから、店内では食べないでね」
子供「・・・・・別に汚れてねーし(ボソ」
子供数名は私の訴えを全く聞いてくれないどころか、反抗的な態度だった。
その光景を中年女性のお客様が見ていた。
やはり、眉間に皺が寄っている。
当然である、周囲の大人に注意されても聞こうとしないのだから。
女性「あの子達ってどこの学校の生徒かしら?」
私「たぶん近くの小学校だと思います、〇〇小学校の生徒の可能性が高そうですね」
女性「なるほど・・・分かりました」
中年女性のお客様はそう答えるとお店を出て行った。
私はため息をついてもう一度雑誌コーナーに視線を戻すと、先ほどまでは強気だった子供達の様子がおかしい。
少しばかり動揺しているようだった。
しばらく黙っていた子供達はそそくさと帰宅していった。
次の日、出勤した私は昨日の出来事を従業員のN子に話してみたところ、彼女は少しニヤニヤしながら口を開く。
N子「ああ、たぶんさ、小学校のホームページから苦情入れたんじゃないかな?」
私「近頃の学校にはホームページがあるみたいですね」
N子「フリーメールを取得すれば、匿名で苦情を入れやすいんだよね」
私「お客様が学校の名前聞いてきたのはそういうことだったんですね」
N子「子供達も学校の名前を聞かれたことでマズイと思ったんだろうね」
私「お客様は本当に苦情のメールを入れたんでしょうか?」
N子「うーん、何とも言えないね、脅かすつもりで学校の名前聞いただけかもしれないし、本当に腹が立ったのならメールしてるかもしれないし」
私「真実を知るのはその女性のみってところですね」
N子「でもまぁ、子供ってのは大人が何を言おうが聞こうとしないのはいつの時代でもそうだと思うよ」
N子「だけどね、いつまでも調子に乗ってるとあとで痛い目に遭うもんだよ(ニヤリ」
私(N子さんの発言は迫力あるなぁ、そして何気に圧を感じるんだよね)
それからというもの、子供達だけでコンビニに買い物に来ることはあっても、店内で飲食する者は出てこなくなった。
・・・やはり、あの女性客が小学校に苦情を入れたのだろう。
子供達にとっては予想外の展開かもしれないが、そういう流れを作ってしまったのもその子供達の責任でもある。
因果応報、自業自得である。
買い食いをして漫画を読むというとんでもない行動に出たわけだから・・・。
言っても聞かないような子供達をいい方向へ進ませるには大人が動くしかない。
今回の件だと、コンビニには防犯カメラが設置されていることから、もし小学校側から「事実確認させて欲しい」と言われても証拠として残されているので、何も困ることはないのだが。
そうなれば、窮地に陥るのは買い食いした子供達であり、学校関係者は顔色が変わることだろう。
オーナーに言わせると「学校関係者はコンビニに確認しに来なかった」そうなので、女性客が入れた苦情を真摯に受け止めたのだろう。
・・・このような感じで買い食い事件は幕を閉じた。
問題行動を見て見ぬふりする人の方が多い世の中ではあるが、女性客のような正義感の強い人も一定数は存在する。
もし、私が同じ立場に立っていたとしても、小学校に苦情のメールを入れるという選択を取れただろうか?
おそらくは躊躇したと思う。
どうせ子供なんて言っても聞かないし、ひとりやふたりを何とかしたところで言うこと聞かない子はいくらでもいる、キリがない。
そうやって諦めてしまうだろう。
だが、今回はその女性客の勇気ある行動で子供達は反省する機会を与えられ、お店側も悩むことはなくなった。
非常にありがたい話である。
見て見ぬふりはよくない。
だが、思い切った行動を取るのは難しい。
もしかしたら失敗するかもしれないし、そうなるとリスクも生じてしまう。
黙っているのも嫌だけど、いい方法が思い浮かばないとどうしようもない。
悩みに悩んで動けなくなってしまう・・・この世の中を何とかして変えてみたいが簡単にはいかないだろう。
流れを大きく変えるような何かきっかけがあればいいのだが・・・。