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【悪夢】果てしない戦い
次々と襲い来る試練に精神がすり減っていった悪夢の話。
夢の中でパソコンの中に入っていた私はある期待を抱いていた。
「はぁ?パソコンの中に入っていたってどういうことなんだよ?」
そのような声が聞こえてきそうだが、何故かパソコンの中に私は居た。
仮想空間に存在していると言えばいいのだろうか。
うまく表現できないのだが、体がパソコンの中に入って中の動画と一体化したような感じだ。
中に入った時の様子が気になると言われても、動画の画面が360度広がっているような感じとしか言えない。
最初は画面を見つめていたような気もするが、いつの間にか自分の意志とは無関係に入っていたわけである。
私の置かれている状況が想像できないかもしれないが、今はそうとしか言いようがない。
さて、問題のパソコンの画面がどう表示されていたのかについて。
動画サイトの画面は黒い背景に白い字で色々な情報が表示されていくスタイルだ。
私はあるものをとても楽しみにしていた。
私が期待していたのは、ある配信者の動画で私の怪談話が朗読されるというものだ。
それはもうわくわくしながら待っていた。
やった、私の怪談話が朗読される!
私はずっとこの人に朗読されたいと思ってからとても嬉しい。
私の夢のひとつが叶う!
はやく聞きたい!
パソコンの中で天にも昇るような気持ちで待機していた。
しばらくすると・・・配信スタート!
〇△◇×△〇◇×■◎・・・。
あれ?
これ、私が書いた話じゃない!?
もしかして・・・。
違う人の話が流れているじゃないか!?
まじかぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!
動画から聴こえてきたのは違う人が書いた怪談話だった。
目の前の現実を受け入れることが出来ずに頭の中はこんがらがっていた。
な、なんでこうなった!?
すっごく期待していたのに。
とっても楽しみにしていたのに。
どういうことだ、何があったんだ?
私の願いが叶うと思っていたのに。
私の夢が崩れていく・・・あぁぁ、悲しい。
あまりの衝撃的な出来事に私の頭の中は混乱していた。
それと同時に画面に表示されていたものが全部消えてしまった。
一瞬フリーズしてしまったのかと慌てるが、ニヤリとした鋭い目が現れた。
人の不幸をあざ笑うような表情に私は恐怖と怒りを覚える。
そして、どこからともなくこんな声も聞こえてきた。
???「残念だったな(笑)」
???「あんたの話なんて読まれるはずがないんだ!」
???「ザマアミロ!」
どこの誰なんだ、落胆する私をあざ笑うのは!
こっちは落ち込んでいるのに笑うのは酷すぎる!
???「あははははははははは!」
???「誰もあんたに期待なんてしてないんだからな!」
姿の見えない何者かの笑い声で私の顔はぐちゃぐちゃになりかけていた。
かろうじて泣くのは我慢できたが、それでも悔しさで今にも両目から悲しみと怒りを凝縮した涙が零れ落ちてきそうだった。
あぁ、私の夢は潰えた・・・。
うううう、どうして、なんで・・・。
ため息しか出なかった。
もうどんな言葉を吐いていいのか分からない。
下手に喋ると大粒の涙が零れてきそうだった。
もうダメ・・・。
落ち込んだ私はあざ笑う声に文句を言う気力もなく、下を向いた。
顔を上げる自信がない。
今まで楽しみにしていた自分の姿を思い返すと恥ずかしさがこみあげてきた。
ショックで放心状態に陥った私にトドメを刺すかの如くさらに大きな笑い声が聞こえてきた。
穴があったら入りたい、いっそのこと平行世界へ逃げたい。
そう思っていた矢先のことだった。
嘲笑の声をかき消すほどの低くて落ち着いた別の人物の声が私の耳に入ってきた。
謎の人物「お前の居場所はここではない、こっちへ来い!」
謎の人物「そんな奴は相手にするな、お前にはお前の道がある!」
声の主が誰かは一瞬で分かった。
何度も私の夢に登場した謎多き長身の男剣士だ。
ある時は敵対し、ある時は私のピンチを救ってくれた。
またある時は冒険者として自由気ままに旅をした仲間だ。
ん?ちょっと待った。
前回までの夢では彼には声はなかったはずだが。
いつの間に声がついたんだろう。
一度も聞いたことがないはずの彼の声であるのに、なぜ一瞬で理解できたのか。
夢とは奇妙なものだ。
声が設定されていなくても、聞こえてきたものが彼の声だと分かってしまう。
彼の声に導かれるままに私は真っ暗い世界から丸い光の方向へ進むことが出来た。
先程までの絶望という名の暗い世界から抜け出せそうな気がした。
行き着いた先は・・・あれ?
ここって父の単身赴任先だ。
今までパソコンの中に居たはずなのに、いきなり現実で知っている場所に出てくるとは、彼は私に何をさせるつもりなのか。
まぁ、いいか。
夢の世界なら何でもありだし、私をあざ笑っていた声の主はもうどこにもいないから。
それに、彼の姿を確認した私は嬉しさでいっぱいだった。
かなり久しぶりの対面である。
相変わらずの長身でたくましい姿は目の保養になるなぁ。
やっぱり彼は最高だ。
おっと、彼に聞かれないように心の声を必死に抑える。
先程の朗読されなかったダメージと馬鹿にされた台詞が一気に吹き飛んでしまって、一気にマックスまでHPが回復した気分である。
あんなに落ち込んでいたのが嘘のようだ。
彼の声が少し優しかったような気がする。
励ましてくれているのだろう。
続けてこんなことを言ってきた。
男剣士「今から試練を受けろ」
男剣士「選択権はないぞ」
私は唖然とした、試練って何なんだ?
彼は私に何をやらせようとしているの?
男剣士「試練を乗り越えたらいいことがあるぞ」
え?いいことがあるって?
私は彼の言葉に喰いついてしまった。
いいことって何だろうか?
言われるがままに私は試練を受けることになった。
尤も、選択肢がない以上は受けるしかないのだが、流されるまま彼について行くしかなかった。
いつの間にか周囲には他の人達が集まっている。
ぶつぶつと独り言を言いながら本を読んでいる頭の良さそうな人。
嬉しそうにキョロキョロしている愉快そうな人。
顎に手を置いて何かしら悩んでいる真面目そうな人。
様々な人の姿を見て「彼らも試練を受ける人なのだろうか?」と思いつつも、試練の内容を彼に聞いてみることにした。
残念ながら教えてもらえなかったが。
まぁ、試験だから仕方ないかもしれない。
今から何が始まるのか。
ドキドキしながら待っていると、他の参加者から話かけられた。
どうやら、今からクイズが始まるようだ。
クイズか・・・まずいな。
急に参加させられた身としては情報収集も勉強もやってなかったから不利な立場だ。
どうしよう、男剣士の姿を探してみるが、いなくなってる!?
いつの間にか消えてしまっているではないか。
えぇぇぇぇぇぇ!?
どうして居なくなるんだよー!
彼が消えてしょんぼりした私は他の参加者と一緒に行動することになった。
次々と出題されるクイズを何とかクリアして一旦休憩時間に入る。
休憩時間中に他の人を確認するとみんな疲れ切っている。
どう見ても大丈夫ではなさそうである。
もちろん私もあまり大丈夫な精神状態ではない。
よくここまで通過出来たもんだ。
他の参加者情報によると、次のクイズは難易度がかなり高いようだ。
先に高難易度のクイズを受けていた人が真っ青な顔で建物から出てきたのを目撃したという。
次こそ不合格になりそうだ。
私よりクイズに慣れていそうな人達がアワアワしているのだから。
もしここで落第くらったら彼に会えなくなるかもしれない!
もう二度と会えなかったらどうしよう。
・・・と、ガクブルしていたら目が覚めてしまった。
目覚めて最初に思ったのが、彼に会えてよかったことだった。
出来ればもっと楽しいシーンで会いたかったけれど。
次に会う時はいつの夢になるだろうか・・・。