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【不思議な夢】地下迷宮

過去に何度も夢に出てきた謎多き男剣士にまつわる不思議な夢の話。
今回は後半の展開に驚きを隠せない内容だった。


過去の内容は以下に。


気付いた時には夢の世界に居たのだが、洞窟調査団からの依頼を受けて洞窟の入り口にやってきていた。
調査内容は洞窟に時折不気味な連中が入って来ては何か不審な動きをしているので調べて欲しいとのことだった。

ただ、他の冒険者と揉めることもなく、中を荒らすこともしていないので様子を伺うしかないが、調査団としては将来的に何か問題が起きる可能性も考えなければならない。
調査という名目で不審者を監視して欲しいとのことだった。

調査団から洞窟の地図を受け取り、中の構造をチェックする。
広く複雑に入り組んだ横穴式の洞窟で多少は高低差もある、探索するにはそれなりの装備が必要に感じた。

この洞窟には赤い迷路という別名がある。
理由は時折赤い鉱石が発見されるためだ。
暗い洞窟の中にライトを当ててゆらゆらと不気味に赤く光るその姿は悪魔を連想させる。

不審者の目的が赤い鉱石だとしたら、彼等に好き勝手にさせるわけにはいかない。

とはいうものの、ひとりで入るには少し危険を感じたので、傭兵ギルドから応援を要請することにした。
数時間後、数名の傭兵が派遣されてきた。

彼らに地図を見せつつ目的を説明。
もしかしたら不審者と戦闘になる可能性があること、洞窟内にトラップが仕掛けられているかもしれないから注意が必要であること、それ以外の問題も発生するかもしれないことを。

装備の最終チェックを済ませ、私達は洞窟の中へ足を踏み入れた。

ランタンに明かりを灯す。
ぼわっとした明かりが安心感を与えてくれる。

時折コウモリの羽ばたく音に不安な感情が湧きだし、天上から滴り落ちてくる水滴の音が規則的で背筋がぞくぞくとしてくる。

しばらく歩くと分かれ道に差し掛かる。
足を止めて後ろを振り返る。

・・・あれ?


傭兵の人達の姿が見えない!?
先程までは複数の足音が聞こえてきたのだが・・・。
まさか、途中ではぐれてしまったのか?

いやいや、それはあり得ない。
振り返るまでは聞こえていたのだから。

どうしたものか。
このまま進むと危ないかもしれない。
一旦戻って応援を要請するか。

どう動くか悩んでいたところ、足音が段々近づいてくる。
少し遅れてきただけか、ホッと安心したも柄の間、足音の聞こえてくる位置がおかしいことに気付いた。

分かれ道の先から聞こえてくるのだ。

この足音は仲間の傭兵達のものではない。
もしかして不審者か。
それとも洞窟調査隊の者か。

警戒しながら様子を伺う。
足音は段々近付いてくる。
その音は複数だ。

敵か味方か!?

心臓はばくばくしている。
気を緩めることは出来ない。
万が一のことを考えて懐にしまっておいた短剣を取り出す。

・・・人影が見えた。

分かれ道の先から歩いてきたのは3名の冒険者達だった。

気高そうな女性神官、少し気難しそうな男性魔導士、優しそうな雰囲気の男性錬金術師だ。

一見すると不審者には見えないが、味方かどうかもまだ分からない。

少し不安を覚える。
洞窟探索には体力や力が必要だが、彼らはどう見ても後衛職である。
前衛職をひとりも連れずに洞窟探索するのも怪しい。
人は見た目だけでは判断は出来ないが、あまりにもメンバーが不自然すぎる。

恐る恐る話かけてみる。


私「あの・・・冒険家の方でしょうか?」

魔導士「何だお前は?」

私「仲間と一緒に洞窟探索にやってきたんですが、途中ではぐれてしまって・・・」

魔導士「間抜けな奴だな」

神官「あら、私達と同じね、私達も仲間の剣士とはぐれてしまってね」

私「そうだったのですか」

錬金術師「これ以上奥に入るには危険と判断して入口に戻るところだったんですよ」

魔導士「ふん、だからあんな剣士を仲間に加えるなと言ったんだがな」

神官「まぁまぁ・・・仲間割れは洞窟を出てからにしましょうね」

私(もしかして仲が悪いんだろうか、この人達)

錬金術師「ちょうどよかった、あなたは剣士ですよね?」

私「はい、旅の剣士です」

神官「しばらくは私達と一緒に行動しませんか?」

魔導士「おいおい、こんな弱そうな剣士仲間に加えて大丈夫なのか?」

私(ずいぶん失礼な魔導士だな、この男の人)

錬金術師「俺達3人だと先に進むには辛い、前衛職の人がいてくれると心強いよ」

神官「サポートなら任せて頂戴」

魔導士「ふん、足を引っ張るなよ!」


・・・成り行きで冒険者3名とパーティを組むことになってしまった。

新たな仲間が出来て嬉しい反面、調査団の言う不審者の可能性も考慮しなければならない。
ここは気を引き締めて慎重に動くしかない。

彼等のパーティーメンバーの剣士がひとりで奥にいるかもしれない、ということで、戻らずに奥に進むことになった。

先に進みながら3名の冒険者がどういう人物なのか探ることにしてみる。
魔導士はムスっとしており、神官はニヤニヤしながら魔導士をからかう。
錬金術師は間に入って苦笑い。

優しそうな錬金術師が居てくれてよかった。
魔導士と神官だけだったら私の胃に穴が空いていたかもしれない。


錬金術師「すいませんね、あの2人はあまり仲が良くないんですよ」

魔導士「五月蠅い、余計なことは喋るんじゃない!」

神官「ふふふ、彼は神経質なのよ、気にしないでね」

私「・・・・はい」


しばらく歩いている内に最深部への分かれ道が見えてきた。


神官「何となくだけど、彼はこの奥にいるかもしれないわね」

魔導士「ふぅ・・・あいつのためにどれだけ苦労させられたか」

私(その問題の剣士ってひとりでこの奥まで入ったってことかな?)

神官「それでは、進みましょうか・・・」


魔導士が炎の魔法で明かりを強める。
私が持ってきたランタンがより強い光に変わっていく。

気を引き締めてつつ少しずつ最深部に足を進める。
3名も会話をすることなく黙って進んでいる。
聞こえてくるのは私達の足音のみ。

神官「もうすぐ最深部に到達するわ」


開けた場所にランタンを照らすと・・・そこは何もない空間だった。


錬金術師「ふう・・・彼はいませんね」

魔導士「どうせひとりで帰ったんだろう、俺達も戻るぞ」

神官「まぁ、彼は気まぐれだから、冒険に飽きてしまったのかもね」

私「・・・あらら、仲間の剣士さんは居ませんでしたね」

神官「仕方ないわねぇ」

魔導士「歩くのは疲れた、転送魔法で脱出するか」

私「魔法って便利ですね」

魔導士「まあな」

神官「では、まずは剣士のあなたから洞窟の奥に転送しますわね」

私「・・・え!?」


神官が杖を掲げると、黒い光が私を包む!
視界がぼやける。
意識が朦朧とする。

これが転送魔法なのか?

目の前が真っ暗になり、後ろに引っ張られるような感覚に囚われる。
重力に逆らうことが出来ず、尻もちをついてしまった。


ドスン!


私「イタタ・・・」


ゆっくり目を開けると、洞窟の外に出ていた。
おしりを撫でながら立ち上がる。

転送魔法ってもっと楽に移動できるものだと思っていたけれど、こんなに引っ張られるものだなんて。

しばらくぼーっとして彼らが戻って来るのを待つが、数分経っても誰も戻ってこない。

どうしたんだろう・・・?

首を捻りつつもう少し様子を見ることにした。

更に数分後。

足音が聞こえてきたので彼らかと思って音のする方向へ歩み寄ると・・・。

傭兵ギルドの仲間達ではないか!


仲間A「あれ、剣士さん、いつの間に洞窟の外に出たんですか?」

私「あれ?どうしてあなた達が!?」

仲間B「それはこっちが聞きたいですよ!」

仲間C「一緒に歩いていたかと思ったら、一瞬目の前がぼやけたんですよ」

私「ええ?」

仲間C「そしたら変な感覚に囚われてね、気付いたら君の姿が見えなくなってたんだよ」

仲間A「はぐれたにしてはちょっと変だと思ってしばらく待ってたんだよ」

仲間D「もしかしたら不審者の罠にかかったかもしれないと判断して入口に戻ろうとしたんだけどね・・・」

仲間A「不思議なことにどんなに歩いても入口が見えない」

仲間D「体力も段々削られていって、もうダメかもって思ったんだよ」

私「そんなことが起きていたんですね・・・」

仲間B「それでも頑張って前に進んだんだ、そしたら入口への光が見えてきてよかったーって安心したんだよ」

私「はぐれたにしてはなんだかおかしな話ですね」

仲間C「そういえば君はいつ戻ってきていたの?」

私「・・・実は」


仲間の傭兵達に冒険者3名と一緒に最深部まで進んだことを話し、彼らの転送魔法で入口まで飛ばされたこと、その3名がいつまで経っても戻ってこないことを伝える。

仲間達は怪訝そうな表情をしている。

仲間A「まさか、不審者じゃないよね?」

私「・・・そうじゃないと信じたいけど」

仲間C「でも、無事に戻ってこれたんだしいいじゃないの」

仲間D「まぁ、もしかしたら彼らが戻った場所は他のところかもしれないね」

私「・・・そういうことにします、深く考えたところで分かりませんから」


私は傭兵仲間を連れて洞窟調査団に事情を説明して今日の探索を終えた。


私(彼らは一体何者だったんだろう・・・)

私(洞窟探索を終えたら無事に返してくれたし)

私(悪い人達ではないと思いたい・・・)

私(また、どこかで会えるだろうか)

私(その時は剣士の人とも会ってみたいな)


一方その頃。

例の3人組はニヤリとした表情を浮かべながらあることについて話し合いをしていた。


神官「・・・もうすぐ我々の目的が達成される」

魔導士「ああ・・・まもなく復活の時が来る」

神官「あともう少しの辛抱ね」

魔導士「消滅してしまった〇〇様復活の時」

神官「冒険家のふりをして調査するのは大変だったわね」

魔導士「〇〇様とあろうものが病魔に蝕まれて消滅してしまうなど、こんなことがあってはならないことだった」

錬金術師「消滅後にわずかに残された欠片の気配を頼りに、ここまで来るのは大変でしたね」

神官「まさか人間界の洞窟に潜伏していたとは、我々ですら気付くまで時間がかかってしまった」

魔導士「人間共に見つからずに行動するのは骨が折れたが・・・」

錬金術師「・・・本当にバレてないんでしょうか?」

神官「うまく立ち回ったつもりだったけど、人間の中にも警戒心が強い者もいるようね」

錬金術師「・・・〇〇様さえ復活してしまえば、あとはこっちのものです」

魔導士「人間など、どんなに数が集まろうが俺達魔族の敵ではない、〇〇様が復活したと知れたら全面戦争になるだろうが、負ける気はしない」

神官「でも、復活するまでは気を抜けない」

魔導士「ああ、何が起きるか分からんからな」


・・・何と、あの3名の冒険者達は魔族だった!


彼等の目的は会話の内容から察するに、消滅してしまった魔王の復活を望んでいるようだが、謎多き男剣士がまた魔王として君臨する日は近いかもしれない。

彼等の正体が判明したところで目が覚めてしまった。
まさか、謎多き男剣士が消滅してしまったなんて、そして復活を望む魔族がいたなんて。

また会えるかもしれない期待と敵として戦わなければならない苦悩。
出来ることなら魔王として復活して欲しくない。
普通の人間の剣士に生まれ変わってきて欲しい。
だけど、それは無理な話だろう。