夏の疲れをリセット!温度差疲労の解決法🌿
厳しい夏が過ぎ去り、秋の訪れが近づいてくるこの時期、多くの方が酷暑の影響を感じていることでしょう。外の気温はまだまだ高い一方、室内はエアコンで冷え切っています。この温度差が私たちの身体に与える影響は、想像以上に大きいものです。特に、夏の疲れが溜まった身体には、温度変化がさらなる負担となり、慢性的な疲労やストレスを引き起こします。この記事では、ナチュロパシー(自然療法)の視点から、残暑を快適に乗り切るための具体的な方法について詳しく解説します。
ぜひ日々の生活に取り入れて実践してみてくださいね!
ちなみにこの記事は5700字くらいあるので読むのに10分くらいかかるので、読みたいところに飛ぶのに目次を利用するのがおすすめです。
バイタルフォース(生命力)という考え方
ナチュロパシーでは、体内外の温度差が引き起こす問題を「バイタルフォース」(生命力)の乱れと捉えます。身体が恒常性(ホメオスタシス)を維持しようとする過程で、体温調節に負担がかかり、エネルギーが消耗されます。これが慢性的なストレスとなり、自律神経を乱し免疫力の低下を招くと考えます。心身に現れる症状を全体の一部として捉え、最終的に全体がバランスされるようにアプローチします。
身体のなかで実際に起きていること
内部の臓器は熱を帯びたままなのに外部の冷気が体表部を冷やすと、リンパや血液の流れが阻害されます。この状態が長期化すると疲労感や体調不良が表面化します。疲労のもとのひとつ乳酸も蓄積し、免疫系のバランスが崩れ、風邪や感染症にかかりやすくなり、乱れた体温調節機能は自律神経の機能を邪魔するようになります。
では順に解説してみましょう。
①乳酸の蓄積による疲労
酷暑や激しい運動などの環境負荷によって酸素供給が十分でない場合には、疲労を感じやすくなるもう一つの理由があります。エネルギーを速やかに供給するために、**嫌気的解糖**が優先される過程では、ピルビン酸が生成され、その一部は**乳酸**に変換されます。乳酸は体内で速やかに代謝されますが、急激に生成されると、蓄積されやすくなり、筋肉の疲労感や痛みを引き起こす原因の一つと考えられています。
②免疫機能の低下
酷暑は直接的に免疫系にも悪影響を与えます。高温環境下では、体は発汗によって体温を下げようとし、その際に大量の水分と電解質が失われます。この状態が続くと、体液のバランスが崩れ、免疫細胞の働きが低下します【3】。さらに、熱中症のリスクも高まり、身体全体の炎症反応が強化されることがあり、これが慢性疲労や免疫系の不調を引き起こします。
③ストレスの蓄積によるメンタルの低下
酷暑はメンタル面にも悪影響を及ぼします。暑さによる不快感や睡眠不足、ストレスが重なると、抑うつや不安感のリスクが高まります。また、体温調節がうまくいかない場合、精神的な焦燥感が増し、集中力の低下や仕事の効率の低下を招くこともあります【4】。
また、温度差によるストレスは、コルチゾールなどのストレスホルモンの分泌を促進し、免疫系の抑制を引き起こします。これにより、感染症に対する抵抗力が低下し、さらに慢性的な疲労感を感じやすくなります【2】。
温度差疲労の解決に導くナチュロパシーのアプローチ
①まずは食生活の見直し
夏の飲食物は、喉越しの良い冷たいものが好まれがちです。体内には熱がこもったまま体表は冷たく熱が放出されない状態で、体の中心部の消化器系に冷たい飲食物を流し込むとどうなるでしょう。身体は冷/熱/冷のサンドイッチ状態で消化機能は低下してしまいます。身体は一定の温度下のもと機能するようにできているので、低音下では消化機能やもちろん免疫系の機能も停滞するようになります。
温性の食材を取り入れる
エアコンに慣れた身体には、身体を冷やしすぎない温性の食材を取り入れることが重要です。例えば、ジンジャーやシナモンなどの温める効果のある食品は、体内の寒気を取り除き、裏熱を緩和します。ジンジャーは生なら解熱作用が、加熱すると体を温める作用と役割も変割るので、料理によって使い分けるといいですね。また、抗酸化作用のあるビタミンCやEを含む食事を積極的に摂取し、免疫力を強化します【3】。 また暑さで食欲が低下する場合でも、冷たい飲食物に偏らない食事を心がけることも重要です。
食事どきに一緒に冷たい飲み物を飲むと胃酸が薄まることに加え胃の温度も低下するため消化力は落ちます。食事中に飲み物が欲しい場合は、常温か暖かい味噌汁などを一口ずつ飲むのがおすすめです。
水分と電解質の補給
体内温度のバランスを保つためには、冷たい飲み物を飲む場合は、交感神経が活発な日中に摂取することがおすすめです。一方、夕方以降は副交感神経が優位になるため、常温か暖かい飲み物に切り替えることで身体に無理がかかりません(暖かい食事と冷たい食事も同様に切り替えるといいです)。
高温環境下では、こまめな水分補給が重要です。特に、電解質を含んだ水分の常温補給を意識することで、体液バランスを保ち、免疫系の機能を維持します【5】。スポーツドリンクやORS補水液脱水状態予防に勧められることが多いのですが、通常の水分補給には糖分が多すぎます。血糖値に影響しやすいのでそのまま飲まずに水で割るか、自分で好みの低糖補水液を作ってもいいと思います。(下のハーブウォーターのレシピを参考にしてみてくださいね!)
天然のクエン酸を利用して疲労を軽減する
天然のクエン酸には、ビタミンCや抗酸化物質などが含まれ、相乗効果で疲労回復が促進されます。また、全体の一部として吸収されるため体が吸収しやすく歯や胃腸への負担も少ないのです。
お酢に含まれるクエン酸(酢大さじ1で約750mgのクエン酸)を摂取することは運動やストレスによる乳酸の蓄積を間接的に抑制する効果があります。クエン酸は、エネルギー代謝を効率化し、乳酸の生成を減少させるだけでなく、乳酸による酸性度の上昇を和らげることができます。ただし、乳酸を完全に「低下」させるわけではなく、全体的な代謝プロセスをサポートすることで、疲労感や筋肉の痛みを軽減します。
保水に最適!ハーブウォーターの作り方
②植物の力を借りる
西洋ハーブは料理に使ったりお茶にしても日常で楽しめますが、煮詰めて煎じると全身にアプローチできる薬効効果が期待できます。まずはお茶から始めて、慣れたら煎じ薬を自分で作って見るといいかもしれません。
お茶やアロマセラピーの鎮静作用を利用する
カモミールやラベンダーなどの鎮静作用のあるハーブを用いたお茶やアロマセラピーを使用して、ストレスを和らげ、リラックスした状態を促進します。これにより、過度な自律神経の活動が抑制され、疲労感が軽減されます。心身へのストレスが長期化している場合は、ウィサニアやシベリア人参もストレスに対する耐性を高め免疫系への助けにもなるハーブですので、秋らしい気温が戻ってくるまで常飲してよいかと思います。
西洋ハーブ療法の煎じ薬で血行と血流の改善をする
ジンジャーやターメリック、ホーソン、ローズマリー、シナモン、シッサス、ガーリック、ダンデライオンなどのハーブが、体を温め、血流を改善し、血液を浄化するために非常に効果的とされています。これらのハーブは、現代の研究に裏付けられた有効性があるので購入する場合は専門店でスタッフの方に飲み方や量を教わるのがおすすめです。
③ライフスタイル
温度差を減らす
室内と外の温度差を5度以内に保つことで、自律神経への負担を軽減できます。また、急激な温度変化を避けるため、エアコンの設定温度を適切に調整し、長時間冷房や扇風機に当たらないように注意しましょう。また、ほんのり冷たさを感じる飲み物に、氷はひとつかふたつで十分です。かき氷やアイスクリームを食べるなら日中に、日が暮れてからは、甘さ控えめのかんてんやゼリーなどをチョイスするなどで、温度差を広げないスイーツを意識してみてください。
8/24追記:
温度差5度以内は現実的に厳しい😥というコメントをいただいております。
これは5度以内に抑えられれば最適というアイデアなので、そうでなければいけないわけではありません。実際高齢者やお子様などにとって、地域によって厳しい暑さの場所もあるので、安全性を優先で参考として知っていただけたらと思います。室内温度設定は28度にしている家庭は多いと思うので、その場合は自然なサカーディアンリズムにあわせた食事をとるなど、身体の中心温度を目まぐるしく変えないよう工夫するのもいいかなと思います。また、2010年の海外での研究をもとにした文献を参考にしたため、今の日本には厳しい数値だったなと思い、今後は参考資料に配慮するよう心がけたいと思います。みなさまのご指摘、感謝しております。
ストレス管理
リラクゼーション法(深呼吸、瞑想、軽い運動)を取り入れて、交感神経の過剰な活動を抑制します。特に、夜間にリラックスした環境を整えることで、質の良い睡眠を促進し、心身の回復を図ります。
温冷交代浴やサウナ
温かいお風呂と冷たいシャワーを交互に浴びることで、血液循環を促進し、自律神経を調整します。この方法は、体内外の温度差を緩和し、全身のバランスを回復させるのに効果的です。サウナは身体の内側にこもった熱を本来の通路である皮膚や汗腺を通して放出する助けをしてくれます。酷暑の季節のお風呂は心臓に負担の少ない腰から下の半身浴がおすすめ。サウナはヒートストロークに気をつけながら安全に楽しみましょう。
ブルーライトをカットダウンして睡眠の質をあげる
就寝前にスマートフォンやテレビなどのスクリーンを使用しない習慣が、睡眠の質や全体的な健康に与えるポジティブな影響は非常に大きいことが研究で明らかになっています。スクリーンから発せられるブルーライトは、睡眠を調整するホルモンであるメラトニンの分泌を抑制し、寝つきの悪さや睡眠の質の低下を引き起こすことがあります。
理想的には就寝の1〜2時間前には電子機器の使用をやめるのがいいそうです。寝るまで2時間あいだがあると、体が自然にメラトニンレベルを上げて、より良い睡眠の質を促進し、睡眠障害のリスクを減らすという研究が発表されています。
また、スクリーンタイムを読書や音楽を聴く、リラクゼーション技術を実践するなどの落ち着いた活動に置き換えることで、ストレスレベルを下げ、スムーズに睡眠に移行することができます。
いかがでしたか?
8月も後半にさしかかり、秋の声も近くなってきました。この秋を存分に楽しめるように、残暑も一緒に乗り切りましょう!長くなりましたが皆様の参考になれば嬉しいです。コメントや質問は大歓迎です。こんなことを書いて欲しいというリクエストもなどありましたらぜひコメントくださいね。
前田アンヌ
参考文献
1. Stöhr, E.J., González-Alonso, J., & Brothers, R.M. (2021). *The impact of heat stress on autonomic function and cardiovascular health*. Journal of Applied Physiology, 130(2), 491-500.
2. Dhabhar, F.S. (2014). *Effects of stress on immune function: the good, the bad, and the beautiful*. Immunologic Research, 58(2), 193-210.
3. Mora, C., Dousset, B., & Caldwell, I.R. (2017). *Global risk of deadly heat*. Nature Climate Change, 7(7), 501-506.
4. Hajat, S., & Kosatky, T. (2010). *Heat-related mortality: a review and exploration of heterogeneity*. Journal of Epidemiology & Community Health, 64(9), 753-760.
5. Sawka, M.N., & Montain, S.J. (2000). *Fluid and electrolyte supplementation for exercise heat stress*. The American Journal of Clinical Nutrition, 72(2), 564S-572S.