原色の春
日本の春は桜。
これは紛れもない事実だと思う。河津桜や山桜など種類によって違うけれど、大抵淡いピンクをしている。
でも、私が慣れ親しんだのは原色の春だった。
実家の庭に母と私が植え続けてきた草木が茂る春は、桜並木の代わりに原色の花々が咲き誇る。
少しずつ増やしたオレンジのガザニアが地を統べ、その上には祖父がブラジルから持ってきた鮮やかな黄色のイペーが咲き乱れる。
家の前にはもう薔薇が咲いて、紫やピンクのルピナス。我が家の春はいつでも、一斉に色を濃くした花々の主戦場だった。
そんな花々を折って行ったり踏み荒らしたり、植えたばかりの木を根こそぎ持っていかれることもしばしばある。雨のせいで根が腐れて、10年以上かけて広げたガザニアが全滅したこともあった。
いろいろなことを経て、私はまたこの庭の春を見る。
原色の庭で、私はまたひとつ時を過ごす。