デザイナー、かくあるべし!(Yohji Yamamoto)

以前、COMME des GARÇONSを題材にちょこっと書いたのですが、今回はそこにゆかりの深いメゾンに関して書いてみようかと思います。

それはYohji Yamamotoです。


Yohji Yamamotoはその名が示す通り、山本耀司氏がデザイナーを務める日本を代表する被服のメゾンです。

日本に於いて、この方のデザイナーとしての経歴は非常に異色であると僕は感じています。

1960年代に慶應義塾大学を卒業後、文化服装学園に入学、その卒業年度に雑誌装苑の主催する装苑賞を受賞後、72年に『Y’s』を立ち上げるに至ります。

それから10年後、1981年パリのプレタポルテコレクションに於いてCOMME des GARÇONSと共に後に『黒の衝撃』と呼ばれるコレクションを発表します。

一般的にこの『黒の衝撃』は、それまでファッションに於いて禁忌とされてきた黒という色を全面に押し出す事によってその美しさを表現したと解されていますが、実は少し違います。

黒を基調にしたコレクションは1940年代にもCHANELが提唱しています。

しかし、彼女の黒を用いた作品は喪服のイメージから脱却する事が出来なかった。

これは彼女の根底にあった悲しみのようなものが滲み出た結果であるのかもしれません。

当時のコレクションの写真を見ても、フォーマルな装いがベースになっている事からも色の印象を変えるという事が目的ではなかったのだと思います。

そこの印象を変えてしまったのが1981年の黒の衝撃と呼ばれる事件だったのです。

当時は『原爆ルック』後に『ボロルック』と称される事になるスタイルに昇華されていきます。

COMME des GARÇONSとYohji Yamamotoはこのコレクションを機に、現在まで並び称され、比較される対象となっている。

しかし、僕はこの二つのメゾンはまるで正反対だと思っています。

基本的にヘッドデザイナーのスタイルが正反対。

新たな才能を育てて暖簾分けをしようとする川久保玲氏に対して、山本耀司氏は自分のクリエイションを徹底的に貫くスタイルです。

コレクションを見ていると毎回、ベースとなる部分が全くブレてない。

自分の確固たる形をベースに如何に装飾を施していくかという事に心血を注がれている印象を持ちます。

彼の中で恐らく洋服に対しての絶対的な美しいラインというものが存在しているのだと思います。

その絶対比を外れる事は美学として許せないのかもしれません。

モードのデザイナーでありながら、彼は伝統芸能品の作家のような趣を感じずには居られない。

それは、ずっと裏切る事も飽きる事もなく自分の作品を愛し続けてくれている人に対して洋服を作り続けようという矜持にも見えました。

2009年、Yohji Yamamotoは一度経営破綻をします。

この事は大きく取り上げられ、特に日本のファッション業界には大きな衝撃が走りました。

あの山本耀司でさえ自分の好きな服を作り続ける事が困難なのかと。

時代のニーズに一定程度応えていかなければ、自分の納得する作品を作り続ける事は困難になるのだと多くのデザイナーが思った事でありましょう。

これを機に、というべきか。多くのメゾンで生き残る為の手法が積極的に模索され始め、その一つの結論がコラボレーションという所に帰結したのではないかと考えています。

2009年以降、Yohji Yamamotoは製作投資会社が入る事によってそれまでの硬派なスタイルからの脱却を果たします。

高級既製服のラインは継続しつつ、様々なコラボレーションを展開する事によって更に知名度を広げます。

特にストリートカルチャーへの進出を目論んだ事が印象的で、NEW ERAとは毎シーズンコラボを実現しつつ、近年はDr.Marteinsとのコラボも話題になりました。

そうやって再ブランディングに成功したYohji Yamamotoは現在も様々なラインを持ちながら継続しています。

というのが個人的なYohji Yamamotoに関する僕の見解です。

と言っても私、Yohji Yamamotoに関するものは殆ど所持しておりません。

数年前に出たY’s×NEW ERAのパイロットキャップくらいのものです。

そんなヤツが偉そうに語るな!と仰られるとは思います。

しかし、どうもこの展開の仕方が僕には疑問しか生まないのです。

恐らく一定期間は確実に利益を生み出し続けなければいけない状況にあるのだと思います。

その助力を世間もしているし、事実成功している。

しかし、同時に思い知らされてしまうのです。

これ、本当に彼が望んでる事なんだろうか?と。

そう考えるとちょっと切ないんですよね。

Yohjiの服はそういうバックグラウンドもあって、現行のものは諸行無常を感じてしまって僕はまだ着ることができないでいます。

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