漂白剤入りの水提供事件に思う事。
このような記事が現在話題になっています。
有名な天ぷら屋さんで食事をしようとしたお客さんが店側から漂白剤入りの水を提供され、それを飲んでしまった結果、体調不良を起こしてしまったというものです。
店の対応があり得ないという一方で、被害者の方が異国出身だった事から多くの人からヘイトクライムではないか?という意見が噴出。
その対応のマズさと共に外国からの方の国際問題にまで発展しそうな勢いになっている。
ただ、これを見て思った事が少しあったので書き留めたいと思います。
人種差別の意図はございませんが、被害者の方へ感じた少し辛辣な意見も出ていると思いますので、ご容赦頂けると幸いです。
飲食業経験者としての見方が大きく含まれると思いますので。
さて、今回のこの事件ですが、店側が99.9%対応を誤っていると言えます。
まず、飲食店の店と客の双方には金銭契約が成立する。
簡単に言うと、客は金銭を支払う事で店側から食事を提供されるという事です。
その食事に関する事に対して、店側は安全や品質を考慮したものを提供するというのがこの契約の最低限の約束事です。
今回の件はその契約が守られていない。
漂白剤というものは服用すると人体に悪影響を及ぼすことは子供でも分かる。
それを提供した時点で、契約を履行する意思がないと判断でき、この契約は破られた事になる。
食事を提供する場において、ここの契約が守られないというのは決定的な瑕疵です。
法的措置に移行すればこの問題だけでもバチボコにされてしまう事になります。
異常があるという客の訴えにも対応せず、事が重大になってから対処というのも悪手です。
これだけで一流店とは到底呼べないレベルだなと思われます。
ただ、私はこの店の対応で0.1%は同情してしまった部分がありました。
それはこのお客が発したこの言葉です。
「お水が先ですよ。お願いします。」
水を頼んだのにしばらく出てこなかったというのもどうなってるんだ?とは思うし、注文を選択している間にも時間があったとも思うだろう。
日本語が堪能でなかったのかもしれないし、純粋にお水が欲しいという気持ちで言ったのだと思う。
「先ですよ」
この言い方は馴染みでもない高級店では絶対にしてはいけない。
飲食業、特に高級店というものに分類される所で給仕をされる方に必要とされるのは、
「客の言外の意図を汲み取る事」
なんです。
発せられた言葉だけでなく、その人が無意識に発する信号を捉えて言葉にする前に動く。
それが結果的に全体的に良い環境を生み出し、品質の高い食事の時間を演出する。
そこに気付く客は実は少ない。
そこに気付く人というのは余程そういう店に慣れた人間か、同じ仕事に従事する人間だけだろう。
それを悟らせては店員側の負けなのだから。
そう考えると、この最初の一言目がいかに悪手だったかが分かるだろう。
確かに客を待たせた事はマイナスポイントだが、その一言にとても嫌味な所を感じ取ったとしても不自然ではない。
そこには外国人も日本人も関係ない「厄介な客」というレッテルがその時点で貼られたと思っていい。
そして、カウンターの店だということからその感覚は店員全員に伝わったのだろう。
そして、漂白剤入りの水を飲んだ際にも「叫んだ」とある。
カウンターの高級店で大きな声を上げることはそもそも御法度です。
カウンターの店というのは連れてきた人と静かに会話を楽しんだり、目の前の板前の方との会話を上品に楽しむ場でもある。
そこで大きな声を上げる事に抵抗が無いという時点でカウンターの店で食事をする資格が残念ながら無いと言える。
異変があったとは言え、その異変が店側の過失によるものか、自分側の過失によるものかの判断が相手側に即向けられる時点で、店側の事を馬鹿にしているのである。
そこまでの余裕がなかったのだとも思う、しかし、その気遣いが出来ないのは店側を下に見ているとしか思えない振る舞いだと感じました。
そして、店側もそういう視点で見られていたという事を察知していたからこそあの事後対応になったのだと予想が付きます。
これは罪と罰の問題ではなく、こういう所を利用する事のモラルやルールの問題だと感じました。
それとしても客側の過失は0.1%にも満ちません。
だって、それを証拠の残る形でやっちゃったのはプロとして失格ですから。
その不満をジワジワとぶつけて二度と来ないように仕向けつつ、金を支払わせるのがプロの仕事。
そういう暗黙のルールを守らなかった、守れなかったのは軽蔑にも値します。
というのが私の個人的且つ偏見に満ちた感想です。
住んでいる土地柄もあるのでしょうが、言外の意味というのはとても大きく、それを理解できなければ生き残れないと思っている所があるので、こういう感想になりました。
言いたいことや伝えなければならない事を伝えるというのは重要な事です。
それによって法律問題に発展した際には、その事が有利に働く場合がとても大きい。
しかし、それがその時、その場所に正しい振る舞いをした上の行為でなければ相手には歪んで伝わるのです。
そして、その伝え方を知らなかったというのは、そもそもその場に居る資格がないと思われても仕方のない事だと思うのです。
こういうお店の特性として絶対に入店は断らないし、追い出すこともしない。
しかし、その間で客を見極め、対応を決めるという事が出来ないとその店の環境は維持できないのです。
実はヤバイな…と思う客には「即刻出て行け!」と相手に告げるのは最もお互いに効果的なのではないかと思ったりしている。
これを許してくれる経営者が居るとは思えないけどね。
しかし、これで多くの人が飲食店に於いてその場に相応しくない行為をしているとこういう事になるという事が分かったと思います。
それはやらないだろう。って踏んでることが億が一で起こる事もあるんです。
お互いにそういう事ができる状況であるという事をもう少し認識するいい機会だと思ってしまった。
人類史上最も多くの命を奪ったのは、銃でも爆弾でもなく毒なのだから。