見守られた日々
わたしは、小さな田舎町の、小さな集落で生まれ育った。
家族は両親、弟、父の母である祖母、更には祖母の母である曽祖母。
この家族構成を当たり前に思っていたが、成長するに伴い、ほとんどが核家族で育った友人達を見て、そうではないと知る。
父は勤めに出ていたが、昔から農業を家業としていたから、家は兼業農家。
優しいけれど無口な人、と幼いわたしには映っていたように思う。
外に働きに出て、休みの日は農業。
無口だったのは、相当疲れていたからだと、今なら理解できる。
母は、いつも明るくて、穏やかな人。
愛に溢れて、太陽のような存在。
家に居たので、幼いわたしは、母は専業主婦だと感じていたが、毎日内職に精を出していた上に、農業も手伝っていたから、相当忙しい主婦だったのだ。
そして毎日田畑に出ていた祖母もまた、穏やかで優しい人だった。
わたしのことを本当に可愛いがってくれた。
明治生まれの曽祖母は、母にとってはなかなか手強い相手だったようだが、わたしにとっては、やはり優しい、もう1人のおばあちゃんだった。
弟とは、思春期にはお互い忙しくなり、あまり話もしなくなったが、幼い頃は、いつも一緒に遊ぶ、仲の良い姉弟だった。
昔からの、集落だから、近所との関係性も深かった。
同じ年頃の友達と、来る日も来る日も、日が暮れるまで、外で遊び回っていた。
そしてそこには、常に顔見知りの大人たちの、さりげない目があった。
わたしは、愛に溢れた家族や、近所の大人たちに見守られ、大きな安心感の中で、のびのびと自由に育てられたのだ。