【Live Review】Built To Spill@Webster Hall〜喪失感とともに生きるということ
マンハッタンのWebster HallでBuilt To SpillのThere’s Nothing Wrong With Loveの30周年のツアーを観てきた。
このアルバムは、全体を通して、とにかくキャッチーなメロディーと演奏の力の抜け具合が最高。
In The Morning。
1日の始まりは清々しいようで、夜や明日を思うと気怠くなる。
Big Dipper。
この軽妙なリズムとスカスカ感。
Carのメロディーとボーカルの美しさ。
想像力や好奇心は時間と共に形を変えるけど、諦める必要は無いという気になる。
僕にとって、アルバムのハイライトは、Twin FallsからのSomeの流れ。
バンドの中心人物のダグの幼少期からの故郷アイダホ州のTwin Fallsでの想い出を歌っている曲で、そこから続くSomeのギタープレイはNeil Youngのよう。
Distopian Dream Girl。
生で演奏を聴くと、一拍目の余韻が残るようなドラムが際立って心地よい。
アンコールの最後は、アルバムKeep It Like a SecretからCarry The Zeroだった。
このアルバムは、Pitchforkの90年代のベストアルバム150で101位にランクインしている。(余談だけど、その前後はジム・オルークとウィルコだ)
Zeroってなんなんだろうなって今更気になって歌詞を改めて眺めた。
歌っている内容は定かではないけど、失ったものを運んでいくのかなというように思えた。
似て非なるものかもしれないが、ビートルズのCarry The Weight を思い起こす。
果たせなかった約束とか、変わっていく人間関係とか。
時間や場所の巡り合わせ・タイミングとか、そういうのは少なからずあるわけで。
大人になって、そういった感情や後悔をどこかで背負いつつも、新しい事にトライしたり、前からやりたかったことに手をつけていきたい。
そういう挑戦をする家族や友人を遠くからでも応援していたい。
喪失感を抱えながらも、前に進むということ。
会場を後にして、自転車で夜のマンハッタンを走る中で、自分の中で何となく腹落ち出来たのだ。
最後の以下の歌詞の部分で、ベースのリズムに変化があるところから、アウトロに繋がる展開がとにかくカッコ良い。観客達もグッと拳を上げて、飛び跳ねていた。
And now it's coming back
Hasn't it come too far?
I was trying to help
But I guess I pushed too hard
Now we can't even touch it
Afraid it'll fall apart
【セットリスト】
Made-Up Dreams
〜There's Nothing Wrong With Love〜
In the Morning
Reasons
Big Dipper
Car
Fling
Cleo
The Source
Twin Falls
Some
Distopian Dream Girl
Israel's Song
Stab
〜Encore〜
Get a Life
Untrustable/Part 2 (About Someone Else)
When I'm Blind
Carry the Zero
おしまい。