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【絵本】『おこだでませんように』/「いたずらっこ」と呼ばれる子の心を知る

タイトルの「おこだでませんように」というのは、いつもいつも怒られてばかりいる小学1年生の男の子が、七夕の日に短冊に書いた言葉。

「おこられませんように」と書きたかったけれどうまく書けず、うまく書けなかったからまた怒られちゃうんだろうなあと思いながらも、必死に書いた、願い。

これだけでもう、読んでいていつも、泣きそうになってしまいます。

怒られてばかりの男の子

「ぼくは、いつでもおこられる。家でも学校でも。」

主人公の男の子は、いつも怒られてばかり。
お友達を叩いたり、妹を泣かせたり、学校に虫を持ってきたり、するから。
周りの大人は「どうしていつもそんなことばかりするの?」と、ついつい怒ってしまいます。

困らせたいわけじゃない

でも男の子側の立場に立って見つめてみると、大人が見ていたものとは違うものが、見えてきます。

お友達を叩いてしまったのは、仲間外れにされたから。
妹を泣かせてしまったのは、お母さんが留守のあいだ頑張って面倒をみていたのに、妹が駄々をこねたから。
虫を学校に持ってきたのだって、決してみんなを怖がらせようとしたわけじゃない。

もちろん、仲間外れにされたからって、叩いていいわけじゃない。
お母さんがいない寂しさで妹が駄々をこねたからって、泣かせていいわけじゃない。
虫を学校に持ってきたら、そりゃあ教室中が混乱してしまう。

だけど、男の子はまだまだ小学1年生。
あれもこれも、精一杯、学んでいる真っ最中。

お友達から仲間外れにされたとき、叩く以外にどうしたらいいのか。
二人だけの家のなか、妹が駄々をこねたとき、どうすればよかったのか。
自分が素敵だと思った虫を、学校に持ってきてお友達に見せてあげることは、なぜいけないのか。

精一杯考えるけれど、自分だけではわからない、あれこれのこと。
大人に教えてほしいけど、怒られるだけで、どうすればよかったのかはわからないまま。
わからないから、また、同じことをしてしまう。
そして今日も、怒られる。

叱るかわりに

表面的にみると「いたずら」や「悪さ」ばかりしているように見える子がなぜそういう行動をしてしまうのかがわかると同時に、「いい子になりたい」「大人から笑顔を向けてもらいたい」という切実な願いや内面の心の動きが、とてもよく理解できる絵本。

ただ叱るのではなく、その子に理解できるように教えてあげることができたなら。
「どうしてそんなことばかりするの?」と怒るかわりに、「あなたはいい子。だけど、こういうときは、こうしようね。大丈夫、これからいろいろ、学んでいこうね」と抱きしめてあげることができたなら。
そんなことを、思える絵本。

「子どもにいつも怒ってしまう」「どうしてうちの子はこうなんだろう」と悩んでいる先生や保護者のかたに。


最後までお読みいただきありがとうございました。
どうぞ素敵な読書体験を!

※書影は版元ドットコム様よりお借りしています。

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