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【ムーンライダーズ】AMATEUR ACADEMY and more 2024 鉄骨は下げられ、ドラム缶は残った

現存する日本最古のロックバンド、ムーンライダーズ。諸説あろうが、1970年代初期に成立し、前身のバントを含めると活動歴は50年近く(休止だって活動の一形態だ)、古参であることは間違いなく、そんなバンドがコロナ禍の前から、そしてコロナ禍の只中も、それからも、ちゃんとフィジカルな(これ言っときたい)ライブを定期的にやってくれている例は、知る得る限り他にはなさそうに思う。

11月になったばかりの新月のこの夜、一夜限りの東京ライブを観た。バンドのフルメンバーが揃うライブは少なくて、最近はチケットが取れないこともある。自分にとっては、昨年6月の恵比寿ガーデンホール以来だから1年4ヶ月ぶり。東京国際フォーラムのホールC(1502席)は見たところ満席。3階席センター最前列なのでステージ全体が見渡せる。1階席のダイナミズムには敵わないにせよ、ある意味、良席。たびたび目が合ったように思える武川雅寛さん(真正面にいて、トランペットとヴァイオリンで元気な音を聴かせてくれた)は74歳だそう。メンバーも年季が入っているけど、それはお客さんたちだって負けてはいない。

きょうは1984年リリースのアルバム「アマチュア・アカデミー」を再現するという趣旨。当時、コンピューターによる音作りがポップ音楽の世界に定着してから、まあ5年かそこらくらいか(諸説あり)。当時でも先鋭的なレコーディングをしていた記録が(もちろん作品も)残るライダーズだけに、あの「マニア・マニエラ」録音の2年後となる本作は、いまの耳には程よく懐かしく、程よくこなれ感のあるデジポップ感が感じられる。パンフに収録されている2004年のインタビュー(宮田プロデューサー召喚の巻)は相当興味深い。

とにかく、懐メロ盤を聴くときにじわっとくる「ウェルメイドだけどリアルじゃないね」という感想、カタログ的に自家薬籠中のものにしていくときの「こなしていく」あの感覚はなくて、この頃のライダーズの音源は、宙に浮遊しているように、古くも新しくもない。

ところで昨年の「マニア・マニエラ」再現ライブは衝撃だった。全然再現じゃなくてまったき新作、みたいな。別の言い方をすれば、強い詞が残れば、音が違ってもそれは再現なのだと。それに比べると、今回の再現は「バランスが取れていた」。

もちろん後ろ向きなところは一切ない。音は、70代のバンドとは到底思えないみずみずしさ。鈴木博文のうねるベース、くじらさんの、体の深いところを触られるようなトランペットとフィドル、白井良明の変態ギターワーク(前半はクリアトーンで抑えめだったかも)。そこに腰の低い夏秋ドラム(ディジュリドゥも)、踊る澤部ギター、エモーショナルな佐藤key(岡田徹追悼モードもある中で、気持ちのこもった素敵な音色だった)が加わり。つくづくライブバンドなんだよな〜。

インダストリアルなSEからそのまま流れ込む、やたら土臭く演奏された「塀の上で」に始まり、コンピューターでつくられたこの1984年のアルバムを再現する前半、鈴木慶一はほぼアコギを弾いてたと思う。フェンダーに持ち替えたのはたぶん3曲くらいでは。84年のリアルタイムを40年を経て再構築するにあたり、さらに踏み込んで自分たちのルーツに寄せていく。その営為は、現在のテクノロジー社会(そしてその前の「鉄の時代」も含めて)を、改めてどう捉え直すかという「思考」があってのことだったと思う。ギターの音色が「とても入って来る」タイプのライブだった。

そしてライブはライブ。音源とは違う。これまでのどのライブもそうだけど、そして毎回改めて感じるんだけど、ムーンライダーズはライブでこそ真価が発揮されるバンドだということは、パブリックイメージ的に結構知らない人も多いのではないだろうか。古い言葉かもしれないけれど、アンサンブル、とか、グルーヴ、みたいな単語がきょうは浮かんだ。あったりまえだけど演奏がうまいんだよなあ!! 1500人のホールで座って聴くのもいいけど、お酒を飲みながらリラックスして音に身を任せたい感じ。だから追加公演と称して新代田FEAVERをやるのかな。

終わってみれば、いつものライブの定番曲はあまりないライブなのだけど、ドントトラストエニワンオーバーサーティー、とアンセム的に歌われるアンコール曲は、30歳以上を、に加えて、50、40、70歳以上も、と変えて歌われた。ほんそれ。年代とかじゃないのよ。年代、世代じゃなくて、死んでるように生きてる輩を信用するな、と鼓舞された。昔から彼らが言ってたことだよね。それと、その直前の曲「工場と微笑」に込められたものと、両方を噛み締めて、2024年10月が終わったばかりの11月からを生きていきたいと思った。

それにしても澤部さんがチャーミング過ぎて参ったぜ。

2024/11/01

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