2019/09/22 (回想録 Vol.14: 台湾[5])
台南は台湾の古都。古都と言っても清代や東インド会社統治からの独立時代以降の中心地である。
高鐵で読書をしていたら平然と乗り過ごし、終点左營まで行ってしまった。こういう悠長なことをするようになるあたり、台湾生活に慣れてきた感じがする。幸い外国人限定の高鐵乗り放題チケットを使っていたので、せっかくだし駅の外へ出たものの、あまり面白くなかったのですぐ折り返した。
高鐵台南駅から台南市街地まではさらにローカル線を乗り継いで20分くらい。
台南到着後は市街地。。。ではなく、さらにバスで20分ほど西の安平へ。もう海も近く、水の街である。かつてはここは広い内湾で、交易や防衛の要所であった。いまでは綺麗な遊歩道と名物牛肉湯の店などが並んでいる。ここにも雀が多いが、カメラの望遠レンズを向けると逃げてしまう。澎湖島の雀たちに比べガードが堅い。
朝食は有名店文章牛肉湯で食べたかったのでわざわざ我慢してきた。お腹がすいていたこともあり、異常においしかった。牛肉湯は熱いお湯に牛肉をさっととおしてごはんと薬味で食べるシンプルな台南の郷土料理。
この地で有名な観光名所が安平古堡。17世紀にオランダ東インド会社によってゼーランディア城として築城。鄭成功によって台湾が奪還されてよりは鄭政権の王城として引き継がれ、イギリスの砲撃による爆破、廃墟化を経ての日本統治時代の再建と、台南の歴史の紆余曲折を経験した第一級の史跡である。
資料館にちょうど英語ガイドの人がいたので、1時間ほど場内を案内してもらう。ガイドさんを独占できたので最高だった。しかも無料。
上の城壁が現存する最古のもので、オランダ統治時代に築かれたもの。ここが台湾の一級史跡に指定されている部分。その上の写真にあるものは殆どが日本統治時代のもの。各々でレンガの作り方や積み方が違うことを説明された。古いレンガはブロックが平べったく、安定したつくりをしている。また隙間を埋めるセメントにはさとうきびや牡蠣の殻が使われており、よく見ると貝殻が残っている。城の頂上には西洋風の建築が残っているが、屋根は日本風の瓦が積まれている。各所に残る大砲はオランダ時代のものだが、資料館には清代のものもある。様々な時代の遺物が一堂に混在している史跡は貴重だろう。
ここにも雀はいる。
城の外は屋台が並んでおり、現地の観光客や住民の憩いの場になっている。屋台で遊ぶ子供たちは日本のお祭りを彷彿とさせる。騒がしいながらもどこか懐かしい時間の流れを感じる。
墓地のつくりも独特。バスを待っている間、子供を三人連れたお母さんが、子供たちがうろちょろするのをゆるやかに静止していた。そのお母さんとほぼ同時に手を挙げると、バスが音を立てて止まった。
台南市街は古都なだけあり、大南門など古い史跡が数多く残る。さほど観光地らしさを押し出すでもなく、古いものが雑然とした街に点在している。
先に述べた台南の孔子廟は台湾最古のもの。合唱団が外で歌を歌っていたり、廟の入り口でおじさんが座り込んで談笑していたり、市民の憩いの場として親しまれているようだった。
台湾といえば食べ物を売る夜市が有名だが、草木を売る専門の市場もある。常設の市場なのだと考えると不思議な文化だと思う。
赤崁楼もまたオランダ人によって築かれた城である。すごくお洒落。暑さと歩き回っていた疲れでぼんやりしていたので、もっときちんと来ればよかった。ここにきて日本人らしき観光客を発見した。
バスで駅へ戻り、再びローカル線に揺られ高鐵台南駅へ。旅先で見る夕日の美しさは、日常で見落としていたものを再発見させてくれる。ただの農村風景が一段と美しく見えた。
唯一とった高鐵の写真に、自身のシルエットが映り込んでいたことに後で気が付いた。
夜はかねてより来たかった海邊的卡夫卡(海辺のカフカ)という音楽カフェへ。店主が村上春樹を好きなようだ。
数年前に南壽あさ子さんがここでLIVEをしたのでその聖地巡り。当時を想像しながら、静かな夜を過ごした。カフェとしてもとても美味しいアイリッシュコーヒーを頂いて、満足感をもって帰路についた。