着物の断捨離のすすめ
本日は、着物で暮らして7年が経過した筆者の経験をもとに、着物好きさんにおすすめの着物の断捨離について書いていきます。
安い古着をたくさんゲットしたけれど、着こなしがぱっとしない。
収納棚いっぱいに入った着物は、出すだけ一苦労。
憧れのあの人と同じ着物を買いたいな。
着物を持て余し、収納場所に悩み、はたまた素敵な着こなしを模索したり。そんな着物民に試していただきたいのが断捨離です。着物を着る際に感じている悩みや煩わしさは、もしかしたらご自身や着物ではなく、着物の「数」が原因かもしれません。
先に要旨をお伝えすると、ただの「捨てる断捨離」ではなく、お気に入りの着物だけを毎日着る環境を作りましょう、というお話です。ご自身の審美眼にかなった着物に袖を通す暮らしは、きっと素敵な日々に違いありません。
みなさんの参考にしていただくべく、私が着物の断捨離に踏み切った経緯から語り、その中で断捨離をすすめするだけではなく、具体的な断捨離の方法にも触れていこうと思います。
着物を買うとき、私は古着を選ぶことが多いです。
古着屋さんで500円の着物を掘り出したり、ネットで全国から目当ての着物を探す日々。そうしていると、「こんないい状態で破格の値付け。古着は一期一会っていうし、買わないと損だ!」となることがよくあります。着物に限らず、心当たりのある方は多いのではないでしょうか。しかし、よくよく考えてみれば、これは間違いだと気づくはずです。だって、買った方が確実に財布は軽くなるのですから、損に決まっています。
その着物が欲しいのではなく、二度と手に入らない(と思う)から買うという発想。そうして溜まっていった着物達。シンプルなスタイルが好きな私の場合、ダークトーンの無地調のものばかりが集まってしまいます。それ自体はなにも悪くないのです。問題は、それらを組み合わせるときに起きるのです。
「この着物とあの羽織でコーディネートしてみよう」、となったとします。
そうすると、ばらばらに購入してきたもの組み合わせるのですから、当然のように裄丈(腕の部分の長さ)もばらばらです。羽織の袖から着物が袖が出てきてしまう、なんてことがよく起こります。しっかりと着物より大きい羽織を選んだとしても、固い素材の羽織とてろんとした絹の着物では、固い羽織の袖から絹着物が出てきてしまうことも…。
コーディネートをしていると、色の相性というか、調和した色合いに組み合わせられたとき、達成感というか、ささやかな喜びを感じられます。しかし、古着屋などで安いからと買い集めた着物たちは、見比べてから購入したものではありませんから、自宅の鏡の前で合わせてみて初めて、色が喧嘩することが判明したりします…。ほかにも、羽織ってみてから太って見えることに気づいたり、自分には派手すぎると後悔することもしばしば。
こんなことがよく起こるので、出掛ける前に着替え直すこともしょっちゅうありました。何という時間の無駄…。衝動買いというものは肯定派な私ですが、適当買いによる失敗はよくないと感じています。しかし当時の私は、そんな失敗だけでなく、物理的な古着物をどんどん積み上げていました。
試行錯誤の失敗は、成功への道の途中。何度繰り返してもいいと思います。だけれども、推敲していない着物をどれだけ頭をひねってこねくり回しても、理想の着こなしには遠く及びません。その失敗は、ただの徒労となります。
着物を断捨離する前の私は、着物を着ること自体が面倒になり、時間がないからと洋服で出掛けることもありました。これって、着物が悪いのでしょうか?そんなはずはありません。そのことに気付いてからは、新しい着物は十分に検討してから購入するようになり、手持ちの着物も厳選を幾度も重ねて断捨離していったのでした。入口を狭くして、出口を広くしたということでしょうか。
しかし、「いざ断捨離」と意気込んでみても、着物を減らすということは、なかなか簡単にいきません。
どれも大切にしていたので傷んでいない。
組み合わせ次第では着られる。
お気に入りが傷んでしまったときの代用品としてストックしておきたい。
部屋着や長襦袢として使えそう。
こうして、一軍になれない着物に延命措置を繰り返してしまうのです。大量の部屋着候補が挙がり、それを却下し断捨離ゾーンへ。しかしどうしても捨てられないからと、今度はストックゾーンへ。そうしてひたすら悩む日々で時間だけが過ぎ去り、収納の中身は変わらないまま…。
だって、着物を捨てるとなると罪悪感を強く感じてしまうから…。
わたしはずっとこう思っていました。我々の遺伝子が「民族衣装を捨てるなど鬼の所業!」と叫んでいるのだと。もちろん、そんなわけありませんでした。着物を手放すことへの罪悪感の正体は、きっと自分の失敗を内省したくないという子供じみたもの。粗相の後始末をすることに心が痛むからです。
しかし、このままでは同じ失敗を積み上げて、いずれ収納スペースは宇宙のごとき速度で膨張し、終いにははち切れてビックバンが起きてしまいかねません(そんなアホな)。そもそも、どこか不満を感じたまま着られる着物も可哀想です。
好きな服を着る目的とは、突き詰めれば「なりたい自分になること」ではないでしょうか。そのために私たちは断捨離という針路を選び、自分を幸せにしない着物とお別れするのです。そして私は、着物の断捨離を決行しました。私は血涙しました。メロスが激怒したように。
(断捨離の参考までに、私の断捨離の基準について軽く触れておきます。寸法があっているか、自分に似合う生地であるか、好きな色柄であるか、の3つの視点で着物を選別し、2つ以上当てはまる着物以外を全て処分しました)
そうして血涙したおかげか、今では「選択肢に好きなものしかないという幸せ」を噛みしめることができています。手元に一軍の服だけを残す。それがいかに素敵な体験か、ぜひ皆さんにも味わっていただきたいと願い、今こうしてつらつらと駄文をこしらえている次第です。
突然ですが、「人間は選択肢が3個以上に増えると負担に感じる」と言われているのはご存じでしょうか。この説は、ミニマリストの「モノの数」の決め方に大きな影響を与えてもいます。暮らしの中に散りばめられている選択肢を絞り、少しでも負担を減らそうと考えるわけですね。外食は決まった店で同じものしか頼まない、服は同じものでそろえる、などというように、決断すること自体を拒否する行動は、それによるというわけです。
しかし、この「選択≒負担」という図式になってしまうのは、それを手間に感じてしまう場合に限るのではないでしょうか。好きな分野で悩み、迷い、選ぶのであれば、むしろ楽しいはず。大好きなケーキ屋さんでひとつだけケーキを選ぶというのは、大変難しく、しかし至福の時間でもあるのです。
暮らしの中の些細な瞬間にも、これは当てはまります。なにかを厳選し、断捨離をした後であるならば、そこから選ぶという過程は楽しいものであり、選択の結果は良い方向にしか転びません。だって、そもそもの選択肢がお気に入りしかないのですから。「私、失敗しないので」の名セリフでおなじみの外科医と同じ、当然の帰結なのです(少々古いでしょうか)。
ここまで来ると、自分の着こなしを自然と好きになっていきます。雑誌や広告で、素敵な芸能人が素敵な着物をお召しになっているのを目にしても、「すぐに欲しい!」とはならなくなります。断捨離によって自分の着こなしに自信がついてくるのですから、他人に憧れる気持ちが薄くなっていくのです(自信がない頃の私は、素敵なものを身につければ自分も素敵になれると信じてしまっていました…)。
断捨離をしたことで、これまで着る回数が少なかったお気に入りの着物の出番が増えました。
断捨離をしたことで、収納に余白が生まれて着物を取り出しやすくなりましたし、収納した着物に皺がつきづらくなりました。
断捨離をしたことで、どのアイテムの組み合わせも相性がよろしく、鏡の前で悩むこともなくなりました。
これが、着物愛好家の皆さんに断捨離をおすすめする理由です。
ビバ!お気に入りの着物だけに囲まれた暮らし!!
着物の断捨離におすすめの方法
ここまでひたすら、着物の断捨離をおすすめしてきました。そして、断捨離に興味を持たれた方の多くはきっと、こう思っていらっしゃるのではないでしょうか。
「どうやって着物を手放せばいいんですか?」
そんな素朴な疑問にずばりお答えしましょう。着物を断捨離するのにおすすめの方法は、以下の4つです。
売る
譲る
リメイクする
リサイクルする
どうでしょうか。とても簡潔で、簡単です。この中でも特に、わたしはリサイクルに出すか、売ってしまうことが多いです。それはなぜなのか、もう少し詳しく説明していこうと思います。
いざ断捨離しようと思っても、着物を捨てることには罪悪感がありますよね。それと比べ、リサイクルに出すのであれば精神的に断捨離も簡単になります。おすすめなのは、ファストファッションで有名なH&Mの取り組みを利用することです。こちらでは、実店舗に袋に入れて持ち込めば無料でリサイクルとして回収してもらえて、さらにクーポン券まで貰えてしまいます。他にも古着回収を行っているアパレルもありますし、お住まいの地域のリサイクル事業を調べてみるのもいいでしょう。着物をリサイクルに出すのって、意外と身近で簡単だということがお分かりいただけるかと思います。
もちろん、リサイクルに出すのではなく、売ってお金に換えるのもいいでしょう。買ったものをタダで手放すことに抵抗を感じる方には、コメ兵などの着物も取り扱う買取店へ持ち込むのがおすすめです。ただし、買い取り金額に期待してはいけませんよ。たくさんの着物をひいひい息を切らして持ち込んでも一着数百円にしかならないことが多いです。もし、大量の着物の買い取りをしてもらいたい場合は、自宅に取りに来てもらえるサービスを利用するのがおすすめです。
メルカリも着物を売ることができるのですが、メッセージのやり取りや梱包、発送などの手間がかかります。断捨離の手段としては、いささか面倒ですのでおすすめいたしません。
着物の断捨離でおすすめした残りの2つの方法は、誰かにお譲りすることと、着物を他の何かにリメイクすることでした。その着物が欲しい人をピンポイントで探すのは大変ですし、リメイクも例えばドレスに作り替えるのは一苦労です。よほどその着物に愛着がなければ(義理の母からのもらい物だから…などが該当しそう)、断捨離する方法としてはおすすめいたしません。時間と手間のかかるこれらの手段は、断捨離を挫折する原因になりうるためご注意ください。
結び
わたしは、ストイックながちミニマリストではなく、ゆる~いミニマリストです。お仕事には洋服を着ていっているので、本来のミニマリズムに照らせば着物は不要なものだということになってしまうのですが、着物で日々暮らしています。そんな私が、ひとさまに断捨離を勧めるなどちゃんちゃらおかしな話なのです。
ただ、私がここで皆さんにお勧めしたかったのは、単に着物を捨てることではなく、本当に好きな着物を着るということです。
自分に似合うものをしっかり吟味し、毎日大好きなものを身に着ける暮らし。わたしが共有したかったことは、断捨離すること自体ではなくて、その先の素敵な時間です。断捨離を通じて、みなさんの着物生活がより一層素敵なものになりますように。
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